東京モーターショーで見ておくべきものは?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/6 ページ)
海外メーカーの撤退が相次いだ東京モーターショー。しかしユーザーとして、あるいは自動車産業に何らかのつながりを持つビジネスパーソンにとっては、多くのメーカーがこぞって商品を持ち寄る場であり、普段なかなか確認できない業界動向を直接観察するチャンスであることは変わりない。見どころを一気に紹介する。
それがなぜなのかといえば、かつてモーターショーが果たしていた役割は、もはや自前でまかなえるようになったというのが、どうやら各インポーター(輸入元会社)の本音らしい。
インポーター各社は、いまや通常ディーラー以外にも、都心の一等地にフラッグシップディーラーを持つ。例えば東京ショーに参加したベンツを例にとっても、羽田空港と六本木にプレミアムな店舗を用意し、家とクルマをトータルでAIがコントロールするといった未来技術の提案はもとより、レストラン・カフェなども併設して、特別な顧客へのもてなしが可能だ。気になるクルマがあればすぐ試乗できるし、ブランドストーリーについての展示もできる。いわば365日モーターショー状態にある。
しかしながら、旧態然としたモーターショーでは、その大切なお客様をイモ洗い状態の行列に並ばせて、クルマが見えるかどうか危ぶまれるような混雑を余儀なくさせる。プレミアムを志向する各ブランドにとって、今時そんなコミュニケーションの形はあり得ないからこそ、モーターショーは世界中でNo!を突きつけられている。
各ブランドの都合としてみれば、ポテンシャルユーザーをゆっくりもてなす展示ができないならば、お金を使う意味がない。
しかし視点をひっくり返して、ユーザーとして、あるいは自動車産業に何らかのつながりを持つビジネスパーソンにとっては、多くのメーカーがこぞって商品を持ち寄る場であり、普段中々確認できない業界動向を直接観察するチャンスであることは変わりない。
ということでいささか導入部分が長くなったが、今回のショーで確認しておいた方がいい、地味だが次世代ビジネスを変える可能性のあるモデルについて一気に解説していく。
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