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マツダCX-30の発売と、SKYACTIV-X延期の真相池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)

マツダ第7世代の2番バッター、CX-30が10月24日に国内発売となった。Mazda3のときもそうだが、このSKYACTIV-Xの遅れを、設計に問題があったとする記事をいくつか目にした。その真相を語ろう。そして、海外試乗時から大幅に改善されたCX-30について。

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 マツダ第7世代の2番バッター、CX-30が10月24日に国内発売となった。販売が始まったのは、SKYACTIV-G 2.0(ガソリン)とSKYACTIV-D 1.8(ディーゼル)の2種類のパワートレーン搭載モデルで、期待のSKYACTIV-X搭載モデルは年明け1月となっている(Mazda3 のSKYACTIV-Xは12月中旬発売予定)。


Mazda3をベースにしたSUV、CX-30

SKYACTIV-X発売延期の真相

 Mazda3のときもそうだが、このSKYACTIV-Xの遅れを、設計に問題があったとする記事をいくつか目にした。筆者でも「この人が書いたら信じてしまう」ような人が、開発失敗のストーリーで記事を書いてしまっている。ちゃんとマツダに聞かずに記事にするのはいただけないが、説明の仕方にも問題はあったのかもしれない。

 ご存じの通りマツダのSKYACTIV-Xのキモは、スパークプラグを利用した圧縮着火システムにある。マツダはこれをSPCCI (Spark Controlled Compression Ignition:火花点火制御圧縮着火)と名付けた。点火プラグによってできた火球が、周辺の混合気を圧縮することで、混合気が圧縮によって温度臨界を超えて自己着火する仕組みだ。

 この仕組みは基本的にノッキングと同じ。エンジニアリング的には、コントロールされているものは「燃焼」で、コントロールできないものを「ノッキング」と呼ぶ。つまり従来コントロールできなかったノッキング領域の一部を、コントロール下におけば燃焼となる。

 SPCCIでは圧縮着火させるので、そもそもの燃料の性質は「ノッキングしやすい」方がいい。だからSPCCIには本来オクタン価の低いレギュラーが向いている。

 ただし、全域となると少し話が違ってくる。高回転側では「自己着火するには反応時間が足りない」ためにSPCCIが成立せず、SI(プラグ着火)になる。これは今のマツダの方式を上回る全く新しい燃焼メカニズムができない限り、論理的には改善不能である。だからこの高回転域に限っていえば、従来のエンジン通りハイオクの方が望ましい。

 そもそもSKYACTIV-Xは、自己着火を利用した超高圧縮比と希薄燃焼を使って燃費を向上させ、従来の希薄燃焼エンジンのような火炎伝播(でんぱ)のエラーによるくすぶりを起こさないことが眼目だ。結果的に低負荷域から中負荷域の燃焼効率が高まって、実用で多様する領域で、出力的にも燃費的にも優れた結果を実現できることを狙ったものだ。

 本来的には、例外に属するトップエンドは捨てても構わないはずで、高回転域の耐ノック性と中低速域のノッキング的燃焼のやりやすさを秤(はかり)にかければ、後者が重いはずである。

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