アマゾン「置き配」の衝撃 「お客様が神様で無くなった世界」で起こり得る“格差問題”:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
配達員が荷物をユーザーの指定場所に置く「置き配」。アマゾンジャパンが標準配達方法にする実験を実施した。筆者はユーザー間で一種の「格差」が生じる可能性を指摘。
「お客様は神様」でない時代の“最適解”か
現在、利用できる置き配のサービスは、利用者が能動的に置き配を選択する必要があるが、多治見市の実証実験では、標準を置き配設定にする。配達後には写真をメールなどで確認することができ、盗難などの際にはアマゾンが補償するという。希望すれば手渡しでの受け取りも可能である。
現在、日本では深刻な人手不足から、配達業務の持続可能性が議論となっている。ネットでは「お客様は神様ではない」「サービスを受けたいなら対価を払うべきであり、安いサービスはそれなりの品質でよい」「再配達などで配達員に負荷をかけるべきではない」との声が多いように見受けられる。
アマゾンにとってもそれは同様であり、同社は置き配こそが「お客様は神様」ではない時代における、最適な配達方法と考えているに違いない。
実際、使って見ると分かるのだが、置き配の効果はあまりにも絶大である。手渡しによる配達と比較すると、その効率の良さは比較にならない。荷物の配達時間を気にしながらスケジュールをやりくりしていた頃と比べると天と地ほどの差がある。ネット上で実際に利用した人の声を見ても、多くが置き配の効率の良さを絶賛している。
これは事業者にとっても同様で、基本的に再配達がなくなるので、従来とは比較にならないレベルで配達員の負荷は減ることになる。多治見市の実証実験も、圧倒的に効率がよいという結果になるのはほぼ間違いない。
だが、日本において、このサービスが本格的に普及するのかはまた別問題である。先ほどネットの声は圧倒的に置き配を支持するものが多いと述べたが、それはあくまで置き配を積極的に選択し、それを体験した人の意見である。
置き配に関する記事の一般的な反応を見ると、置き配には否定的な利用者が多いように見える。また広く置き配が普及すれば、一定確率で荷物の紛失などトラブルが発生する可能性が高く、一部の利用者はアマゾンに対して激しいクレームを付けるだろう。こうしたトラブルがネットで拡散し、一種の社会的ヒステリーを起こす可能性は否定できない。
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