フリーランスにも「所得補償」や「健康診断」を IT人材エージェント各社がサービスを充実:増えるフリーランス人口(2/2 ページ)
雇用制度の変容により、増加しているフリーランス人口。ランサーズの調査では、2015年から2018年にかけてフリーランス人口が22.6%増の1119万人まで増えている。一方で、フリーランスが困っているのが「収入」と「社会保障」だ。従来は案件の提供をメインに行っていたエージェントでも、こうした背景を受けて福利厚生を充実させつつある。
「所得補償」制度も
PE‐BANK(東京都港区)は、フリーランス向けに確定申告のサポートや健康診断キットの購入全額補助、家族までを対象に含めた健康診断に対する補助金制度などを充実させている。
同社は1989年に、ITエンジニア向けの協同組合として創業。同社の高山典久取締役は、「創業当時は『フリーランス』という言葉もなかったのでは。企業側もあまり積極的ではなく、個人単位で仕事を受注するのが難しかった」と話す。そこで、仕事の受け皿として組合を作り、給付金や補助金などの制度を充実させていたという。共済会費を負担して加入する「PE共済会」では、所得補償金や審査不要のがん保険なども受けられるというから驚きだ。
また、フリーランスに対する家族の理解度を高めるため、家族も参加できるイベントを実施したり、読書会や勉強会といった“横”のつながりを広げる活動の後押しもしている。
geechs job(ギークスジョブ)を展開するギークス(東京都渋谷区)は、フリーランス向けの福利厚生サービス「フリノベ」を17年から提供している。PE-BANKのものとは違い、こちらはサービスを提供する企業と提携し、利用者が提携先のサービスをお得に受けられるようなものがメインだ。フリーランスの要望を受け、アンケート調査を行いながらサービスを設計した。今では提携企業は30社近くにのぼる。
同社の担当者によると、「特に喜ばれているのは会計サービスや健康診断サービス。会社勤めだったときに受けられていたようなサービスは人気がある」という。
フリーランスが増加している背景には、こうした各エージェントの手厚いサポートもありそうだ。
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