えっ、日本産でない? 「韓国の納豆」が世界市場を席巻する日:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
今年の鍋のトレンドは「発酵鍋」らしいが、筆者の窪田氏はちょっと懸念していることがあるという。「発酵の中でも、特に『納豆』にチカラを入れなければ、遠くない未来に悔やんでも悔やみきれない事態が起きるかも」というのだ。どういう意味かというと……。
市民権を得つつある「natto」
順を追ってご説明しよう。まず、世界的な健康志向の高まりから「日本食」がブームになっており、その中でも発酵食品が人気になっていることに異論を挟む方はいないのではないか。
農林水産省によると、海外の日本食レストランの数は2006年に2万4000店だったが、13年には5万5000店、17年には11万8000店へと急増。これにともなって、しょうゆと味噌の輸出も増加しており、東京税関によると昨年の醤油と味噌の輸出は数量・金額ともに過去最高を更新。醤油は70カ国、味噌が53カ国へ輸出されたという。
「いや、味噌や醤油は外国人でも受け入れられるが、においのキツい納豆はムリだ。周囲の外国人はみんな気持ち悪いと言っていたぞ」と主張する方もいらっしゃるだろうが、そういうネガティブのイメージも「スーパーフード」として注目されていることで、少しずつだが変わりつつある。
例えば、米国には「NY rture NEW YORK NATTO」という、日系アメリカ人のアン・ヨネタニ氏が納豆メーカーを設立。健康効果の高い納豆を世界に広げることをミッションにして活動。インスタグラムにはレシピを紹介している(参照記事参照記事)。
また、米国のナチュラルフードを扱う専門店などには、日本から輸出された「natto」が並び、その品ぞろえが充実してきている。実際、財務省の貿易統計によれば、納豆の17年の輸出先によれば、韓国の約226トン(約1億400万円)、中国の約214トン(約1億900万円)を抑えて、米国が約694トン(約3億6400万円)と最も多い。
もちろん、一般の人々にまで浸透はしていないものの、健康に対して意識高い系の人たちには「natto」は、着々と市民権を得つつあるのだ。実際、スーパーモデルのミランダ・カーは2016年からマルコメの「発酵食アンバサダー」としてテレビCMに起用しているが、これはジャパンマネーで無理に引っ張ってきたわけではなく、ミランダ自身が味噌汁を愛飲していたからだ。
彼女のようなセレブの間で、健康や美容にいいということで「miso」が静かなブームになっている。ということは、スーパーフードとして知る人ぞ知る存在となってきた「natto」もいつ火がついてもおかしくないのだ。
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