えっ、日本産でない? 「韓国の納豆」が世界市場を席巻する日:スピン経済の歩き方(5/5 ページ)
今年の鍋のトレンドは「発酵鍋」らしいが、筆者の窪田氏はちょっと懸念していることがあるという。「発酵の中でも、特に『納豆』にチカラを入れなければ、遠くない未来に悔やんでも悔やみきれない事態が起きるかも」というのだ。どういう意味かというと……。
世界に向けた情報発信を
せっかく東京2020で世界中から観光客が集まるのだから、そのタイミングをフル活用するのもいいだろう。チーズなど世界中の発酵食品を集めて、「発酵オリンピック」なんて開催して、味噌、醤油、納豆、塩麹、漬物などの魅力をアピールして、日本が「発酵先進国」だというプロモーションを仕掛けるのだ。
「何もそこまで必死にならなくても」と笑う人もいるかもしれないが、相手はもっとハングリーだ。我々が思う以上に貪欲に「日本の食品」の座を狙っている。
例えば、08年6月4日、「中央日報」の電子版では、韓国の調味料会社「トンウンFC」が米国に支社を設立して世界戦略を開始すると報じた。そこにはこんなことが書かれている。
「世界市場で韓国の伝統発酵食品のしょう油が日本の製品のように認識されていることを正したいという。初期には日本のテリソースをベンチマーキングして世界市場に軟着陸した後、世界の人の舌を変えていく計画だ」
また、韓国で「醤油の名人」と言われるセムピョ食品の副社長は、日本の醤油製法の秘密をどうしても知りたくて、1986年にヤマサで味噌製造現場を見学。麹菌を繁殖させる麹室でできるだけ大きく空気を吸い込んで鼻の中に菌の“種”である胞子を集め、部屋から出るなりすぐにティッシュで鼻をかみ、帰国後にその成分を徹底的に研究したという、驚きのエピソードもある。
この貪欲さを思えば、「納豆」もうかうかしていたら危ない。気がつけば、「あれ? 知らなかった? 納豆ってのはもともと韓国が本場だよ」なんてことを世界中で触れ回っているかもしれない。
「慰安婦」や「独島」の問題も然りだが、日本人は、相手が世界中で大騒ぎをして既成事実化した後で、「あれはインチキだ」「うそをまき散らすな」と後手に回ることが多い。
「発酵鍋」のようなブームを仕掛けて、国内市場を成長させることも確かに大事なことかもしれないが、後で泣きをみないためにも、ぜひ納豆メーカーの皆さんには「先手」をうって、世界に向けた情報発信にも力を入れていただきたい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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