パーソルチャレンジ、ITに特化して障害者の就労を支援 背景には進まぬ障害者雇用:IT人材の供給不足も
パーソルチャレンジがITに特化した就労移行支援事業所を開設した。民間企業で法定雇用率を達成している企業はわずか40%程度。2020年度末までには法定雇用率のさらなる引き上げが予定されており、企業には雇用拡大の必要性が生じてくる。また、IT人材の不足も今回の設立の背景にある。
障害者雇用支援事業を手掛けるパーソルチャレンジ(東京都港区)は11月1日、IT特化型就労移行支援事業所「Neuro Dive(ニューロダイブ)」を開設した。人工知能(AI)や機械学習、データサイエンスなどの先端IT領域で障害者の職域拡大を目指す狙いがある。
就労移行支援は、障害者総合支援法に基づいて提供される福祉支援サービス。65歳未満の身体、知的、精神障害または難病のある人で一般企業への就職希望者が対象。最長2年間、就職に関する相談や必要なスキル訓練などを受けられる。
厚生労働省が2018年に発表した調査によると、民間企業の障害者雇用率(法定雇用率)が現在2.2%なのに対し、実雇用率は2.05%、達成している企業の割合は45.9%にとどまっている。法定雇用率は20年度末までに2.3%へ引き上げることが予定されており、企業においてはさらなる雇用の増大の必要性が出てくる。これまで障害者を募集していた職種だけでなく、新たな職種での募集も必要になってくるだろう。障害者側も、これまでにはないスキルを磨く必要が出てくる。
人材市場では産業構造の変化により、IT人材の必要性が高まっている。経済産業省が16年に発表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」では、19年をピークにIT人材の供給数は減少していくと予想。30年には需要に対して最大で79万人が不足すると見込まれている。
こうした背景を受けて、ニューロダイブは設立された。ニューロダイブでは、オンライン学習サービス「Udemy」などを通し、IT領域のスキルを学習する。また、国家資格を保有したキャリアコンサルタントとITに詳しいスタッフを配置し、それぞれの特性に沿った支援を行っていく。実際に就職活動を行う際は、パーソルホールディングス内で連携し、転職サービス「doda」を活用するなどのフォローも行っていく。担当者によると、20人の定員に対し既に10人の利用者がいるという。
障害者の就職支援サービスなどを手掛けるリクルートスタッフィング(東京都中央区)の飯尾朋子氏は、「『障害者だから』といって一律に線引きするのは良くない。ITは先端的なテーマだが、持っている障害によっては適性があるケースも存在する」と話す。法定雇用率の引き上げを前に、企業側も障害者側も、新たなステップを踏み出すことを求められている。
関連記事
- 金魚すくいにテレビゲームが「仕事」? “虚業”化した障害者雇用をどう変える
自身も脳性麻痺(まひ)の子どもを持ち、『新版 障害者の経済学』などの著作もある慶應義塾大学の中島隆信教授が、障害者雇用の問題点を指摘した。 - 「障害者雇用の水増し」で露呈する“法定雇用率制度の限界”
複数の中央省庁が、障害者の雇用率を長年水増ししてきた疑いが浮上している。障害者雇用の現場で、一体何が起きているのか。自身も脳性麻痺(まひ)の子を持ち、障害者雇用に詳しい慶應義塾大学の中島隆信教授に、国と地方自治体による水増しの背景と、日本の障害者雇用の問題点を聞いた。 - フリーランスにも「所得補償」や「健康診断」を IT人材エージェント各社がサービスを充実
雇用制度の変容により、増加しているフリーランス人口。ランサーズの調査では、2015年から2018年にかけてフリーランス人口が22.6%増の1119万人まで増えている。一方で、フリーランスが困っているのが「収入」と「社会保障」だ。従来は案件の提供をメインに行っていたエージェントでも、こうした背景を受けて福利厚生を充実させつつある。 - 松屋フーズ、ヤマト、KDDI、第一生命 先進企業に探る「障がい者雇用」の本質
2018年4月から障がい者の法定雇用率が引き上げられた。ヤマト運輸や松屋フーズなど「先進的」と呼ばれる企業は、障がい者の能力をいかに引き出しているのか。障がい者雇用の本質を探る。 - 障害者雇用水増しに「怒りより痛み感じて」 車いすの歌姫の叫び
障害者雇用水増し問題に障害者タレントが本音を語った。自分たちが企業から受けた差別を踏まえ「やっぱりそうなのか」。「私たちの痛みを自分のことと感じて」と話す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.