人気なのに「地元から出ない」名古屋めしの名店 共通点は“売り上げ構造”:名古屋めしビジネス「勝ち」の理由(3/4 ページ)
名古屋圏以外に出店しない、地元密着を貫く名古屋めし企業の共通点とは何か。新しいものを取り入れながらも、「地に足を着けた経営」を続けている。「ここでしか食べられない」という価値だけでなく、まずは地元の人に愛されることが基本のようだ。
「『名古屋めし』を目的とする若者や観光客が増え、ラシック(名古屋中心部にある三越系列の商業施設)内の店舗に行列ができるようになった。これがきっかけで他の商業施設からオファーが相次ぎ、飲食店の出店に拍車が掛かった」と、宮商事常務取締役の伊藤嘉英さんは話す。
若者客の増加に合わせて、商品開発も活発になっている。カルボナーラきしめん、台湾まぜきしめん、冷やし坦々きしめんなど、近年は創作きしめんメニューを積極的に導入。SNS世代の女性や若者らにウケて、情報発信の面で効果を上げている。
新たな試みにチャレンジする一方、飲食事業に注力する中で痛切に感じているのは基本をおろそかにしないことだという。
「新規出店した際に、最初に思うように売り上げが上がらないと、つい焦って変化球的メニューを投入したりするのですが、結果的に失敗に終わることが多い。ある店舗では提供スピードを優先してダシを変えたところ、わずかな味の変化に気づいたお客さまが離れてしまった。目先を変えたり効率化を優先したりするのではなく、強みを伸ばすという姿勢が大切だと、いくつもの失敗を経験して学びました」(伊藤さん)
そして、強みを伸ばすとは、すなわち絶対的なおいしさの追求だ。
「秋田県湯沢市で2011年から開催されている『全国まるごとうどんエキスポ』で、昨年初めてグランプリに輝き、今年も準グランプリを獲得した。東京などからの出店オファーは以前からあり、5年前はまだ自信がなかったが、今なら“行けるのでは”という手応えがある。ただし、最初は物珍しさである程度の売り上げは見込めるのでしょうが、“おいしいからまた”というリピーターをつかまなければ成功しない。それにはシンプルなきしめんのおいしさで勝負することが何より大事だと考えています」(伊藤さん)
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