日本の「ノルマ」が、欧米の「成果主義」よりも陰湿になってしまうワケ:スピン経済の歩き方(1/4 ページ)
ノルマ――。会社で働いているビジネスパーソンにとっては、あまり耳にしたくない言葉かもしれないが、そもそもなぜこの言葉にあまりいいイメージがないのか。歴史をひも解いていくと、意外な事実が見えてきて……。
11月18日、「西日本新聞」が、厳しいノルマによって心身が追いこまれて、最後は勤務する郵便局の4階から飛び降りて亡くなった当時51歳の郵便配達員のことを報じた。
記事によれば、この男性は、郵便物の取扱件数が首都圏有数の大規模局に異動後、年賀はがきの販売ノルマ達成や時間内の配達を執拗(しつよう)に求められているうちに、うつ病を発症。休職と復職を繰り返し、異動希望を出したが、上司が「病気を治さないと異動させられない」と放置。2010年12月に自ら命を絶った。男性の妻によれば、亡くなった翌日、ノルマ達成のために購入した商品が「ゆうパック」で届いたという。
このような話を聞くと、「ハードな目標を課して、実力以上の力を発揮させようという欧米の成果主義が問題だ」みたいなことを言う人たちが必ず現れる。確かに、東芝、商工中金、神戸製鋼など「現場への重いノルマ」に起因する不正が続発しているのも事実だ。これらの問題を受けて、「ノルマ廃止」へとかじを切った企業も出てきている。
ただ、個人的には、成果主義をどんなにボロカスにこき下ろしたところで、このような問題は一向になくならないと考えている。日本では「ノルマ」と「成果主義」は、言い方がちょっと違うくらいのものだと混同している方が多いが、実は両者はまったく異なるものだからだ。
成果主義とは基本的に「個人」の問題である。成果を上げられた人間には多くのインセンティブが付いて、成果を上げられない人間には付かない。同期入社だとか、社歴が長いとか、社長の派閥に属しているとかはまったく関係なく、「個人の実力」が評価されるシステムだ。
それこそノルマじゃないか、と思う方もいるかもしれないが、こちらは実力の評価ではなく、「個人が課せられる義務」である。
組織やチームに属する人間である以上、誰もが課せられ、クリアしなければいけない義務――「組織人として果たすべき責任」と言ったほうがしっくりくるかもしれない。
責任や義務という重苦しい響きがゆえ、年貢や税金と同じように、この責任を果たさない者は組織内で吊し上げられる。不正受給をする者が社会から激しいバッシングを受けるように、ノルマを達成している者たちから、冷遇・糾弾・排斥される。要するに、イジメに遭うのだ。
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