日本の「ノルマ」が、欧米の「成果主義」よりも陰湿になってしまうワケ:スピン経済の歩き方(2/4 ページ)
ノルマ――。会社で働いているビジネスパーソンにとっては、あまり耳にしたくない言葉かもしれないが、そもそもなぜこの言葉にあまりいいイメージがないのか。歴史をひも解いていくと、意外な事実が見えてきて……。
無責任なことはできません
成果主義の外資系企業などで、目標を達成できなくてもイジメに合うことはない。確かに、職場に居場所がなくなるというような最悪の事態が起きる場合もあるが、あくまでそれはその人の能力が招いた結果なので、批判や糾弾の対象になるような話ではない。成果主義とは、その仕事、その職場で実力を発揮できなかった「個人」がツケを払うシステムなのだ。
しかし、ノルマ主義の企業ではそんな生ぬるい話は通用しない。目標が達成できないことは、組織にいる誰もが達成している義務を果たしていない「みんなへの裏切り」という位置付けになるからだ。成果主義のように、「個人」が職場を去ればいいというレベルではなく、人として果たさなくてはいけない責任から逃げるという「重罪」になる。
だから、真面目な人ほど逃げられない。「ノルマ達成できそうもないんで辞めますわ」なんてサクッと退職願を出せない。なぜなら、我々は幼いころから「みんなに迷惑をかけるな」としつけられている。「みんな」が達成しているノルマを、自分だけが達成できないのは、「みんなにめちゃくちゃ迷惑をかけている」ことになる。
というわけで、真面目な人はまず自分を責める。悪いのは会社やノルマではなく、それを達成できない自分に原因があると考えるのだ。そして、そのような状態が続くと、自分には生きている価値がないと思ってしまう。
これが「過剰なノルマ」で精神的に追いつめられ、自ら命を絶ったり、不正に走ったりする人が後をたたない理由である。
これまでブラック企業で働いていて、過剰なノルマで心身を追い詰められた人たちに何度か取材する機会があった。ほとんどの人たちが「仕事ができない自分が悪い」などと口にするので、「仕事が合わないなら辞めたほうがいいのでは?」というと、多くの人からこんな答えが返ってくる。
「みんなに迷惑がかかるのでそんな無責任なことではできません」
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