ダイバーシティ工場への挑戦 ポッカサッポロが「全ラインの生産を止めてまで」社員総出のイベントを行うわけ(1/3 ページ)
人手不足に悩む工場は多い。ポッカサッポロ フード&ビバレッジの群馬工場もその一つだ。そんな工場が、外国人スタッフの採用に乗り出している。異文化人材の受け入れのために意識した、マネジメントの工夫とは。
豊かな自然ときれいな水に恵まれた群馬県伊勢崎市にポッカサッポロフード&ビバレッジの群馬工場はある。1991年に操業して以来、同工場は缶コーヒーやペットボトルなどの飲料(ビバレッジ)やカップ入りスープを24時間体制で生産。さらに2019年3月には、豆乳ヨーグルトを製造する第二工場も竣工し、稼働を開始した。
ただ、拡大を続ける群馬工場でも、他の多くの製造業の例に漏れず、慢性的な人手不足に悩んでいた。特に深刻化したのは2017年。カップ入りスープの増産が決まり、それに対応するための人のやりくりに追われた。
繁忙期の人手不足対策を外国人スタッフで
群馬工場の工場長を務める近藤崇氏は人手不足の影響について、こう話す。
「カップ入りスープは、秋冬によく飲まれる商品であり、閑散期と繁忙期で生産量の差が激しいカテゴリーです。急に閑散期から繁忙期の体制に切り替えようとしても、従業員の雇用が間に合いません」(近藤氏)
繁忙期にあわせて期間従業員(非正規従業員)の雇用が進めばよいが、人手不足時代に計画的な雇用を行うのは難しい。
そんな中、パートナー企業から近藤氏へ”外国人スタッフ雇用“に関する提案があり、検討が始まった。
実のところ、同様の提案は以前からあったが、全て見送ってきたという。これまで、外国人スタッフを工場で雇用した経験がなかった本社から、「製品(特に食品)の安全性や品質に対する考え方を、徹底させることができるのか」と“待った”をかけられていた。
しかし近藤氏の胸の内には、「何とかなる」という目算もあった。近藤氏の前職である自動車部品メーカーでは、すでに多くの外国人スタッフと共に働いてきた経験があったからだ。
「そもそも『なぜ、ここで働いているのか』という目的は日本人も外国人も同じです。経験上、コミュニケーションさえしっかり取れれば問題はないと思いました。この経験があったからこそ、外国人スタッフの採用に踏み切ることができました」と近藤氏は振り返る。
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