CASEは「独自部分だけでも、クルマ1台分の開発費がかかってます」 マツダ藤原副社長インタビュー(1):池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/6 ページ)
マツダの戦略が分岐点にさしかかっている。第2四半期決算の厳しい数字。第7世代の話題の中心でもあるラージプラットフォームの延期。今マツダに何が起きていて、それをマツダがどう捉え、どう対応していくつもりなのか? その全てを知る藤原副社長がマツダの今を語る。そのインタビューを可能な限りノーカット、かつ連続でお届けしよう。
お客様にCASEの値上がり分をどう納得していただくかということです
池田 もう避けられない時代の要請ということですね?
藤原 なんですが、そういう状態でお客さまにその価格分の価値をどう納得していただくかということです。CASEだけで、20万はとても納得していただけないので、そこで我々が何をするかというと、静粛性であったりオーディオだったり、インテリアの質感だったり。この3点は、そのCASEの20万円分商品を良くして、体感しやすい領域で納得していただくためにやってきたんですね。それによって「やっぱりこのぐらいするよね。中身で納得できるよね」と思っていただけるようにしたかったというのが本来の狙いなので、価格が上がったと言われると、あなたの比較は何年のどのクルマなんですかと。
池田 今、クルマを普通に買う人って40代、50代あたり、あるいは60代も入るかもしれませんね。その人たちは、もしかしたら新車で100万円の感覚が残っちゃってるんですよね。
藤原 だと思います。
池田 赤いファミリアが100万円で買えたとき。今は軽自動車でも100万じゃ、なかなか厳しいですよね。
藤原 買えないですからね。ちょろちょろっといろいろなものを付けていって、200万超えたりするようなことが平気であるじゃないですか。そういう意味では、皆さんの中にある価格の物差しが、相当ずれ始めているんじゃないかなと思うんですけど。
池田 それを書いちゃって大丈夫ですかね。
藤原 いや、わかりません(笑)。
一同(笑)
池田 広報的にはどうなんですか、ここは? ストップかけないと書いちゃいますからね。藤原さんは、いつも大体いろいろ言っちゃう人なんで、私のほうでも真意が誤解されないようにブレーキはかけますが、マツダとしてまずい場合は、それは広報がちゃんと止めてください。
広報 了解しました。
藤原 すいません、いつも言いすぎる。
池田 (笑)。さて、価格感のズレみたいな話は当然あると思いますし、CASEって今すごく多様なものを一気に開発しなきゃならない状態になっていて、研究開発費がどうしても増えるわけですよね? そのあたりは、設備投資も含めて増えていく感じなんですか。
藤原 私の感覚で言うと、今までの自動車開発の人たちとは異なる人たちと、異なる開発をしなくちゃいけないんですよ。なので、適正な開発投資がいくらで、どのくらい人員を配置するのが正しいのか、そこを把握しかねている状態です。
池田 今までの自動車を作る人たちの所帯の外側に、さらに新しい種類の人たちが加わって、その適正コストがまだやってみないと分からない。
関連記事
- 藤原副社長、マツダが売れなくなったって本当ですか?
ここ最近のマツダには、聞いてみたいことがたくさんある。あれだけ出来の良いクルマを作りながら販売台数がなんで落ちるのか? MAZDA3とCX-30を批判している人は、まず乗ってみたのか聞きたい。あれに乗って、それでも高すぎると本当に思うのだろうか?全てを知り、なおかつ一番本当のことをズバリしゃべってくれそうな藤原清志副社長がインタビューに応じてくれることになったのである。第7世代は売れてないのか? を解説しつつ、真実を見ていく。 - 藤原副社長、ラージプラットフォーム投入が遅れる理由を教えてください
- 自動車を売るビジネスの本質 マツダの戦略
原理原則に戻ると自動車ビジネスもシンプルだ。商品とサービスに魅力があれば、新車を正価、つまり値引きせずに売れるから中古車の相場が上がり、その結果下取り価格が高いので、買い替え時により高いクルマが売れる。これが理想的サイクルだ。それを実現した例として、マツダの取り組みを歴史をひもといてみよう。 - マツダCX-30の発売と、SKYACTIV-X延期の真相
マツダ第7世代の2番バッター、CX-30が10月24日に国内発売となった。Mazda3のときもそうだが、このSKYACTIV-Xの遅れを、設計に問題があったとする記事をいくつか目にした。その真相を語ろう。そして、海外試乗時から大幅に改善されたCX-30について。 - EVにマツダが後発で打って出る勝算
マツダが打ち出したEVの考え方は、コンポーネンツを組み替えることによって、ひとつのシステムから、EV、PHV(プラグインハイブリッド)、レンジエクステンダーEV、シリーズ型ハイブリッドなどに発展できるものだ。そして試乗したプロトタイプは、「EVである」ことを特徴とするのではなく、マツダらしさを盛ったスーパーハンドリングEVだった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.