CASEは「独自部分だけでも、クルマ1台分の開発費がかかってます」 マツダ藤原副社長インタビュー(1):池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/6 ページ)
マツダの戦略が分岐点にさしかかっている。第2四半期決算の厳しい数字。第7世代の話題の中心でもあるラージプラットフォームの延期。今マツダに何が起きていて、それをマツダがどう捉え、どう対応していくつもりなのか? その全てを知る藤原副社長がマツダの今を語る。そのインタビューを可能な限りノーカット、かつ連続でお届けしよう。
自力でやらないとメガサプライヤーに牛耳られるわけじゃないですか
池田 とはいえ、マツダの中にその領域のスペシャリストは多くないですよね?
藤原 だから、今、電動化もあって、電動化もインバータだいっていると、もうみんな頭パニックですからね(笑)。基本的に所帯がちっちゃいせいで、今までは丸投げですから。電動化といった途端に、電池だとかインバータだとかが重要になってきます。もう異業種の世界ですよ。そこの知識や知財を持ってるメンバーって少ないですから。だから、何か1つ作ると、もうそこに人材が張り付いてしまって、次の何かを作ろうと思うと、こいつが終わらない限りできませんみたいな。メカニカルな領域のエンジニアはたくさんいるんですけど。
池田 ちなみに、CASEって、Connected(つながる)、Autonomous(自律走行)、Shared(共有)、Electric(電動化)の4つありますね。シェアは直接関係ないでしょうけど、一番工数がかかるのは、やっぱりコネクティッドなんですか?
藤原 今はコネクティッドですね、一番感じているのは。もちろん、Autonomousにつながっていく先進安全や運転支援のところも、センサーだカメラだ、あのへんをどういうふうにコントロールするかっていうと非常に大変なんですけど、あれはまだクルマを動かす方向に近いので、それに近いエンジニアはたくさんいるんです。けれど、コネクティッドだけは想定を超えてますね。
池田 限りなく電気の部分ですからね。
藤原 そうです。
池田 最終的にメカトロニクスみたいに機械に信号が入って、機械を制御する話だったら、信号さえ出てきてくれれば、あとは分かるけれども。
藤原 まだそこに近い人間はいるんです。例えば電動パワステでやってきたやつとか、ABS(アンチロックブレーキ)とかDSC(ダイナミックスタビリティコントロールシステム)をやっていたりする連中は専門が近いですから、そっちのほうにいけるんです。あとは、カメラの画像処理のところは、ちょっと難しいとこはあるかもしれませんけど。領域によって、われわれの会社の中でもピースがところどころ抜けているんですよね。でも、これを全部丸投げしちゃうと、もう何もできなくなるので、とりあえず理解をしないといけない(笑)。
池田 必ずしも現時点の効率だけでは考えるわけにはいかないと。中長期で見たときに、例えば自動運転が本当に自動車メーカーにとってキーに、生命線になってきたときに、それを全部外部でやってたら、内部に何も残っていないと。
藤原 残ってない。そうするともうメガサプライヤーに牛耳られるわけじゃないですか。何にもできなくなるわけですから。ですから、できる限り分割して、メガサプライヤーじゃなくて別々のサプライヤーに外注して、統合してつなげるところは自分たちでやっておかないと。そうしないと、もうメガサプライヤーに、「ああ、そんなこと言ったらやめるよ」って言われた途端に白旗を掲げることになっちゃいます(笑)。
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