CASEは「独自部分だけでも、クルマ1台分の開発費がかかってます」 マツダ藤原副社長インタビュー(1):池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/6 ページ)
マツダの戦略が分岐点にさしかかっている。第2四半期決算の厳しい数字。第7世代の話題の中心でもあるラージプラットフォームの延期。今マツダに何が起きていて、それをマツダがどう捉え、どう対応していくつもりなのか? その全てを知る藤原副社長がマツダの今を語る。そのインタビューを可能な限りノーカット、かつ連続でお届けしよう。
オールジャパンでちゃんとつながっとかないとやばいよ
池田 これでも、みんな100年に一度って言いますけど、実態の本当の大変さはここで初めて説明されたんじゃないですか。
藤原 え?(笑)。
池田 多分誰も説明していないですよ、そこ。もちろん決算のときも、CASEの対応は大変なんですということはおっしゃってましたが、どう大変なのか誰も分かってなかったと多分思うんですよ。
藤原 分かってないと思います。今回はしかもそれが同時に来ているじゃないですか。今までだと環境規制があって、衝突安全があってと、割と順番に来るようなところがあったんですね。大きな波が1個ずつ来てくれたんですけど、今回は違う。これが本当に大変なところだと思うんです。これをメガサプライヤーに全部投げて、おまえらフルで任せるからやってと言うのもやり方なんですけど、やったら多分、のちのちボディブローで効いてくるんで。
池田 しかも時代の先も読んでいかなきゃいけなくて、それこそ5G通信が本格化したときなど。しかも本物の5Gって、だいぶ先らしいじゃないですか、まだ。それこそインフラ側に何十メーターおきにアンテナがないと、実際に作動できないとかっていう領域らしいので、その領域に入っていくときのことを考えると、今の時点で出遅れてしまうと、そのときに急に参入しようといってもできないですよね。
藤原 そう。それも知っておかないといけないじゃないですか。それを任してしまうと、ずっとその相手におんぶに抱っこになるんですよ。もし彼らが間違ったら、もう全部間違ってしまう。だから、ものすごい怖いことになる。ただ、メガサプライヤーから見ればチャンスなんですよね。全部トータルでできますよって持っていくと(笑)。
池田 分からないですけど、デンソーならまだいいけれども、ボッシュとかに任せた日には……。
藤原 ノーコメントで(笑)。
池田 それは私が勝手に言ってるだけですから。
藤原 だからこそ章男さん(トヨタ自動車社長豊田章男氏)が言われているように、オールジャパンでちゃんとつながっとかないとやばいよ、ということは感じております。そういう意味では、今のマツダコネクト2も、トヨタさんとやらしていただいているのは非常にありがたいですし、実は16年ぐらいから、もう実は2人ほどトヨタに出向させたりしています。
池田 これはじゃあアライアンスを策定した時点では、もうこうなるだろうという予測が完全にあったわけですね。
藤原 はい。アライアンスといったら商品の協業をやっていないとおかしいとか言われるんですけど、われわれは、それよりもコネクティビティをどうしましょうかとか、EVどうしましょうかとか、基盤のところをちゃんとやっておかないとダメだというのがあるので、他の業種の方々とは違う協業なんですよ(笑)。
明日のその2へ続く
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。
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