為替は「北米に工場を造っても、ほとんど変わらない」 マツダ藤原副社長インタビュー(2):池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/8 ページ)
マツダの戦略が分岐点にさしかかっている。今マツダに何が起きていて、それをマツダがどう捉え、どう対応していくつもりなのか? その全てを知る藤原副社長がマツダの今を語る。そのインタビューを可能な限りノーカットかつ連続でおとどけしよう。その第2回だ。
日本については、もうすべてよくなりました。
池田 それは、決算資料にある北米のMAZDA3の販売構成で、低価格帯のグレードが苦しいよというヤツですね?
藤原 そうです。MAZDA3のベーシックグレード。ここは特に、日本でいったら軽自動車みたいなセグメントですから、価格志向の強い顧客がたくさんいて、そこは販売店がインセンティブ、つまり値引きを打ちながら販売してたクラスなんです。
池田 なるほど。そこをなんとかしたいわけですね? ちょっと遡って、構造改革ステージ2の問題点が何だったのか。もちろん、全部話すと1時間くらい楽にかかっちゃうと思うんで、かいつまんで読者の方たちに分かりやすいように説明していただけますか?
藤原 構造改革ステージ2、何やったっけ(笑)。えーと、「販売戦略浸透に向けた現場改革の推進」というのが一番のポイントだと思うんですけど、これがうまくいっていないというふうに思います。例えば日本市場も、かつては価格訴求販売をしてましたが、10年ぐらいかけて価値訴求販売に変わっていってここまできたんです。北米は50年くらいビジネスを一緒にやらしてもらっている。その過去に積み重ねてきたやり方がなかなか変えられない。そこを変えようとして努力はしたんですけど、結果を見ると少し不足していたと。その結果、利益が予想どおり出なかったことによって、財務基盤が少し弱くなったなと思うんです。
池田 販売店の財務基盤も、ということですか。
藤原 はい。日本については、もうすべて良くなりました。販売店も含めてものすごく良くなりました。だから、いいように転がり始めると、全部が良くなるんですけど、北米がそこまでいってなくて、北米の場合には1店舗当たり1000台ぐらい売れると、すごくいい経営ができるんですけど、そこを一度もマツダはやったことがないんです。
池田 それは書いて大丈夫なんですか。
藤原 (笑)。大丈夫でしょう。他のメーカーは多分それを超えているところが多くて、そこを超えないと、なかなか難しい。われわれもそれを超えるべく、今リーテルネットワークをきれいにし始めてます。商圏が重なっている店舗を少しきれいにほぐしてあげて、店舗あたりの顧客数を調整してあげようと。
池田 販売店の選抜をしたということですか?
藤原 それもあります。そういう整理を今しつつあるということですね。それによって、そのお店がちゃんと経営が成り立つようにしているので、そうすると、多分人もよくなるし、お店もよくなるし。お店の内外装をきれいに変えることだけじゃなくて、そういう商圏をきれいに整理してあげることも含めて、今のリーテルレボリューションなんですけど、これがまだ目標の300店舗までいってないんです。
池田 あとちょっとですもんね。
藤原 完成した店は100店舗ぐらいになってきて、もう契約済みの店が二百何十店舗。あとちょっとです。21年までにそれを何とかしたい。そこがこの構造改革ステージ2でいったら、できなかったところかなと。それ以外は、一応商品も工場も改革できましたし、実は12年ぐらいから、われわれ数千億の過去の借金を返しているんですね(笑)。
池田 おつかれさまです。
藤原 80年代後半からの、ものすごく大きな借金を数千億返して、並行してプラス2000億、3000億ぐらいの財務基盤を作っておきたかったんです。なぜかというと、それがあると、もう1世代、楽に研究開発ができるんです。そこまでいかなかったので、今また新しい研究開発をしなくちゃいけないステージに入って、少しお金の余裕がなくなっている。そこは多分、構造改革ステージ2の中でいうと、少しわれわれの想定どおりにいかなかったポイントかなと。
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