ワタミは本当に「ホワイト化」したのか? 「ブラック企業批判」を否定し続けてきた“黒歴史”を振り返る:「最強の組織」が陥った罠(1/4 ページ)
創業者である渡邉美樹氏が10月1日、ワタミに復帰。復帰会見では離職率の低下など、「ホワイト企業化」が宣言された。「ブラック企業」と批判され続けてきたワタミだが、本当に環境はよくなったのか。ブラック企業アナリストの新田龍氏が3回にわたり、ワタミの過去を振り返るとともに現状を検証する。
ワタミの創業者、渡邉美樹氏が10月1日付で同社の代表取締役に復帰した。同社は従業員が自殺するなど、「ブラック企業」として批判され続けてきた。しかし、渡邉氏の復帰会見では同社がホワイト企業認定を受けたことなどが発表。離職率も業界平均から大きく下回る数値を記録しているという。いまだにブラック企業として認識されがちなワタミだが、本当にホワイト企業になったのか。ブラック企業アナリストの新田龍氏が3回にわたり、ワタミの過去を振り返るとともに現状を検証する。
【中編】ワタミの「ホワイト企業化宣言」は本当なのか? データから徹底検証する
【後編】ワタミはもう、「ブラック企業」には戻らない そう考えるこれだけの理由
創業10年で株式公開した成長企業
「自業自得! ワタミを業績不振に追い込んだブラック経営の手口を振り返る」
「ワタミ渡邉会長は“Mr.ブラック企業” これだけの根拠」
「ワタミ元店長が告発! ブラック企業の実態」
これらは全て、大手外食チェーン「ワタミ」へのブラック企業批判がピークに達していたころ、さまざまなメディアで躍っていたワタミ批判記事の見出しである。
ワタミが東京の笹塚に「和民」1号店を開業したのは1992年。和民は中高年男性がたむろする大衆酒場、という位置づけだった居酒屋を、丁寧な接客、低価格、そして明るい雰囲気に変えて打ち出したところ好評を博した。同社は90年代を通して、売上高のみならず営業利益、経常利益とも2桁ペースで業績を伸長させ、創業10年目となる96年には株式公開、2000年には東証1部上場を果たす成長企業となる。
運送会社のセールスドライバーから身を立て、当時で売上高240億円規模の企業グループを率いるまでに至った創業者・渡邉美樹は、メディアから「外食産業の風雲児」、「平成のジャパニーズドリームを体現」などともてはやされ、テレビ出演や講演会などに引っ張りだこのスター経営者となった。その後も勢いは止まらず、海外出店、介護事業への参入など業容を拡大。弁当宅配事業に参入した08年には、ワタミの連結売上高は1000億円を超える規模となっていた。
しかしその年は、ワタミフードシステムズ(当時社名はワタミフードサービス)で新入社員が過労自殺し、大々的に報道された年でもあった。同じころから「アルバイトの残業時間切り捨て」や「告発したアルバイトに対する報復的解雇」など、同社店舗における長時間労働や法令違反に関する事件の報道が増え始める。また、社員に向けて「鼻血を出そうがブッ倒れようが、とにかく1週間全力でやらせる」といった渡邉の厳しい姿勢などが報道で明らかになっていき、「ワタミはブラック企業」と大々的に批判されるようになった。
そして13年末、民間団体主催の「ブラック企業大賞」においてワタミフードシステムズは「同賞唯一の2年連続ノミネート」「一般参加のWeb投票では70%がワタミを選ぶ」という不本意な記録とともに、「ブラック企業大賞」と「一般投票賞」をダブル受賞。ワタミは名実ともに、「ブラック企業の代名詞」となってしまったのだ。
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