快進撃続けるアイリスオーヤマの「おじさん技術者」たち 元「東芝」技術者のもと“テレビ”でも旋風を起こせるか:大手企業だけが活躍の場ではない(4/4 ページ)
アイリスオーヤマ初の音声操作可能なテレビを開発するために陣頭指揮を執ったのは、東芝を早期退職してアイリスに入社したテレビ事業部長の武藤和浩さんだ。同社の家電事業部の社員は出身企業が異なる「混成部隊」だ。シャープや東芝出身の40〜50代以上もおり、中には30代で前の会社に見切りをつけてアイリスに移ってきた技術者もいるという。果たしてアイリスの「混成部隊」はテレビ事業でも旋風を起こすことができるのだろうか。
ブランド力に課題 新参者を率いる
国内のテレビメーカーをみると、海外市場で韓国、中国メーカーなどに勝てなくなり、どのメーカーも数年前から生産縮小に追い込まれている。東芝は本体の業績悪化から18年2月にテレビ事業を中国のハイセンスに譲渡、「レグザ」というブランド名は残っているものの、厳しい状況だ。
続いて日立製作所が同年10月で国内の自社ブランドのテレビ販売を終了すると発表、日立のテレビが消えた。16年に台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入ったシャープは、テレビの生産をホンハイに委託、生産台数を大幅に増やしてきていて、意外な感じがするものの、現在の日本市場では首位に立っている。生産コストを絞ったことで、シャープブランドがよみがえりつつある。
この厳しいテレビ市場で、ブランド力のない新参者のアイリスが果たしてシェア10%を獲得できるのかどうか。新製品の音声機能対応テレビは65インチなど大型画面の商品をそろえており、武藤部長は「このテレビの最大のアピールポイントは大画面の高画質と音量だ。テレビの市場は良いときもあれば、厳しいときもある。重要なのは、安定的に売ることだ。大幅に落ち込むことなく売ることができれば、次第にブランドも獲得できる。そうすればシェアも取ることができる。だから発売後のこれからが正念場だ」と決意を語る。
既存のテレビメーカーにはない「なるほど」機能が顧客に評価されて、ブランド力が付くまでには、一定の時間がかかる。そこまで競争の激しいテレビ業界で生き残っていけるかどうかが課題になる。武藤部長率いるテレビ事業と、「アイリスオーヤマ混成部隊」の真価があらためて問われそうだ。
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