ESGは本当に企業価値を上げる? ESG投資の注目は「資本コスト」(3/3 ページ)
昨今よく耳にする「ESG投資」。Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字からなり、これらへの取り組みを考慮して投資を行うという手法だ。しかしESGへの取り組みは、なぜ企業価値を上げるのだろうか? ポイントの一つは企業価値の算出に大きく影響する資本コストにある。
ESG効果が現れてくるのはまだこれから
もしESGへの取り組みによって資本コストが低下するならば、似たような業績の企業でもESG評価の違いによって株価に影響が出るはずだ。しかし「理論的にはPER(株価収益率)に違いが出てくるはずだが、出てこない。現状だとESG評価の違いはボラティリティに出てくる」と森岡氏。
その理由として「現在ESGはまだ投資家に認知されていない。最近やっと認知されてきたところ」だと、森岡氏は推測する。今後、ESGの価値が投資家に浸透するに従い、資本コストの低下を介して企業価値に反映されていくだろうという見立てだ。
そのため三井住友DSでは、現状のESGスコアだけでなく、現在ESGへの取り組みが過小評価されている銘柄や、ESGの進展が期待される銘柄を選定し組み込む「三井住友・日本株式ESGファンド」を運用している。
ファンドの現状は、参考指数のTOPIX(配当込み)を上回って推移している。「直近は、(GPIFなど)需給の影響が大きいと思うが、徐々に(各投資家は)ESGの影響を受けだした。マーケットの評価に織り込まれつつある」(森岡氏)
ただしESG投資と一言でいっても、その評価方法は「各社各様で違う。コンセンサスも違う」(責任投資推進室の齊藤太上席推進役)状況だ。「業績予想はだれがやっても似通っているが、ESGは数値に表せない。各社各様のやり方がある」と齊藤氏。ESGへの取り組みが企業価値を上げるとしても、何がESG評価の本質なのかは難しいポイントだ。
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