「脱パワハラ」はどうすれば? 目標第一の営業部長が苦悩:ケースで学ぶ組織の変革(2/5 ページ)
「その発言、パワハラでしょ」と感じたことがある人も多いのでは。パワハラ文化は長らく日本の会社に根付いているが、どうすれば解決することができるのか。実際のケースで分析したところ……。
変革前の大橋製造
小売店向けにキッチン用品や家電を製造・販売する大橋製造(仮名)は、業界大手の空白を狙った商品を企画し、絶妙な品質と価格のバランスでシェアを伸ばしてきた。業績成果第一主義(歩合制を主軸とする評価制度)で厳しい職場環境だったが、給与水準が高いため、若くして稼ぎたい社員が多く集まっていた。
だが、売り上げ650億円、社員数400名の規模となり、業界大手の一角を占めるほど成長したことで、成長のひずみが現れ始めていた。具体的には、業績拡大を急ぐあまり、大橋製造でもパワハラの問題が表面化し、裁判沙汰にもなった。ブランドイメージの毀損を恐れた役員陣は、パワハラ型のマネジメントを禁止するようになり、マネージャー陣はパワハラを恐れて部下に対して厳しく接することができず、それに伴い業績も伸び悩んでいた。
また、近年採用された若手社員は急成長期に入社した人財とは価値観が異なり、業績一辺倒の目標設定にはついていけないと感じていた。結果として若手の離職率、休職率が高止まりしていた。
そうした現状に危機感を抱いていた人事課長の永島(仮名)は、営業の本丸である第一営業部にメスを入れるため変革の一歩を踏み出そうと考え、「評価制度の見直し」と「若手人財への教育制度の導入」を提案した。しかし、その提案は、第一営業部部長の大澤(仮名)から強い抵抗を受けることになった。
大澤部長の心理はこうだ。「営業部なんだから業績成果第一でどこが悪いというんだ?」「教育やコミュニケーションにもっと時間を割くようにと言うが、そんな時間を費やす暇があったら、少しでも数値目標達成のために時間を使わせたい。業績ノルマは変わらないのに新しいことをやれなんて現場の事が分かっていないのではないか」。
もともと大澤自身は、営業一筋のたたき上げで部長に昇進した人物であり、上司からの厳しい言葉や問い詰めに屈することなく、逆に悔しさをばねにして成果を出してきた経歴があるからこそ、部下に対しても業績成果第一だと言い聞かせ、徹底的に管理して達成させるマネジメントがよいと信じていた。
ところが今になって、「そういうやり方はよくない」と会社は言う。世の風潮があるのは分かるが、パワハラを恐れていたら部下に厳しく迫ることができないのに、結果だけだせとは随分ないいようだ……。
関連記事
- 「韓国人観光客激減」は長い目で見れば、日本のためになる理由
日韓の政治バトルによる「嫌日」の高まりから、韓国人観光客が激減している。このような事態を受け、一部の観光地から「早く仲直りしてくれないと困る」といった悲鳴が上がっているが、筆者の窪田氏はどのように見ているのか。長い目で見れば……。 - チキンサンドに何が起きているのか 全米で人気爆発の背景
米国のファストフードで、チキンサンドが盛り上がっている。話題の商品を手に入れるために、長蛇の列ができることも珍しくないが、そもそもなぜチキンサンドが売れているのか。以前からあったメニューなのに……。 - 「残業が多い・少ない職種」ランキング、1位はちょっと意外な結果に
dodaが「職種別の残業時間ランキング」を発表。残業が多い・少ない双方でちょっと意外な職種がランクインした。全体的に営業は残業長め、逆に事務系は短い傾向も。 - 「日本経済が成長しないのは、中小企業が多いから」は本当か
少子化に歯止めがかからない。出生数は90万人割れが確実となっていて、これは推計よりも早いペースだという。このままだと日本経済がさらに悪くなりそうだが、“治療法”はあるのだろうか。筆者の窪田氏は「中小企業改革」を挙げていて……。 - 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.