長さ10メートルの“鉄道向け印刷”から未来の自動改札まで 鉄道技術の進化を探る:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)
「鉄道技術展」に出展されたものを見ると、未来を感じさせる最新の技術や、鉄道業界を長年支えてきた技術に触れることができる。展示物から、鉄道の“進化”について考える。
旅客案内技術 自動改札機が「顔認証」に?
・顔認証ゲート
大阪メトロは2024年度までに、全駅で自動改札機の顔認証システムを導入する計画だ。チケットレス改札システムの導入を見据えており、12月19日から20年9月30日まで4駅に顔認証改札機を設置する。この実験は大阪メトロ社員のみ参加するという。
この実証実験に参加する高見沢サイバネティックスのブースで、顔認証機能付きセキュリティゲートが展示されていた。顔認証改札機のイメージで、実際に説明員が顔認証でゲートを通過して見せてくれた。立ち止まる必要はなく、やや早歩きでも動作していた。未来を感じさせる展示だった。
このシステムはビルの入退館管理でも使える。鉄道の改札は通過人数が圧倒的に多いから、成功すれば多くの分野で起用されるだろう。
・床面照射プロジェクタ
自動改札機といえば、日本信号の展示も興味深かった。改札機そのものではなく、機械の下に設置された「高性能LED超単焦点プロジェクタ」のデモだった。改札機先端からななめに投射し、改札機中央にクッキリとゆがみのない像を投射する。通行禁止マークや進行を示すだけではなく、広告やイベント会場の地図も出せる。
ホームドアの床、列車の座席、荷棚の壁にも応用可能。観光列車のトンネル内エンターテインメントにも使えそうだ。トンネルだらけのリニア中央新幹線で採用されたら面白そうだ。
・列車の窓に情報を映す
観光列車で車窓を眺めているとき、建物や山の名前が気になる。もし車窓に情報が表示されたら楽しいだろう。旭硝子が展示した「infoverre(インフォベール)」は、まさにその希望をかなえてくれる「夢の窓」だ。特殊な光学樹脂を使い、透明なガラスにディスプレイ装置を直接貼りつけた。フルカラーで情報を表示できる。
神戸新交通の「六甲ライナー」では、ガラスに液晶シャッターを仕込み、沿線住宅へののぞき見を防止している。最近の航空機の窓も液晶シャッター式の日よけシステムを搭載している。これらは実用的だけど、infoverreは楽しい。もっとも、従来のガラスより高いだろうから、通勤電車に搭載して案内情報を載せるような使い道はもったいない。観光列車向けとして、楽しい仕掛けがてきそうだ。
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