お客が300万人増えないと割にあわない!? サイゼリヤがキャッシュレス決済導入に慎重になる理由を考察:飲食店を科学する(3/4 ページ)
キャッシュレス決済を導入する飲食店が増えている。大手チェーンの中でサイゼリヤは導入に慎重な姿勢だ。その理由をビジネスモデルから考察する。
キャッシュレス決済導入で14億円のコスト増?
次にキャッシュレス決済導入に伴うコストに関して考えていきます。
キャッシュレス決済に関して、店舗側のコストはどの程度でしょうか。現在では各社がキャンペーン等を行っており、決済手数料を無料としているブランドもありますが、一般的には3%程度の手数料となります。
次に、来店客の何割程度がキャッシュレス決済を利用するのかを考えてみましょう。経済産業省が2018年4月に発表した「キャッシュレス・ビジョン」では、15年度の日本国内のキャッシュレス決済比率は18.4%となっており、89.1%の韓国、60%の中国等と比べかなり低い状況です。経済産業省は「今後10年間に、キャッシュレス決済比率を倍増し、4割程度とすることを目指す」としています。
仮に、来店客の4割がキャッシュレス決済をするとなると、店舗側で負担する手数料コストは次のようになります。
決済手数料3%×キャッシュレス利用率40%=キャッシュレス決済手数料コスト増加率1.2%
これをサイゼリヤの決算数値に当てはめて考えると、以下のようになります。
売上高1189億円×キャッシュレス決済手数料コスト増加率1.2%=コスト増加額14億円
これを単純に営業利益率に反映させると、現状4.3%の営業利益率が3.1%にまでに低下してしまうことになります。これは大問題です。
ここで考えなくてはならないのが「確かにコストはかかるが、キャッシュレス決済を導入した方が客数が増えて結果的に利益が増えるのでは?」ということです。次は、この部分をデータで検証していきます。
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