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大戸屋の赤字転落、原因は「安すぎるから」?専門家のイロメガネ(2/7 ページ)

定食チェーンを運営する大戸屋HD(以下、大戸屋)が赤字に転落した。2019年9月期の中間決算では、上場来初の営業赤字として大きく話題に。特に値上げによる客数の減少が赤字の原因と指摘されている。しかし赤字転落の本当の原因は、値上げが足りない事にある。つまり高いからではなく「安いから」赤字になっているということだ。

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大戸屋は高い? 安い?

 筆者が通っていた20年ほど前、600〜700円程度だった大戸屋の価格帯は、現在では値上げと消費税の引き上げで800〜900円程度、高いものは1000円以上に上がっている。

 ライバル業態である牛丼チェーンと比べても非常に高い。牛丼は一杯300〜400円程度、最近ではかなりバリエーションの増えた定食でも500〜700円程度と、安さでは勝負にならない。同じく定食チェーン大手のやよい軒と比べても、2割程度は高い。

 ただ、たまに食べに行くと、やはり大戸屋はうまい。


店舗調理にこだわる大戸屋の冬のメニュー

 筆者が通っていたころはデフレ真っ盛りで、牛丼が300円以下、マックのハンバーガーは100円と極端に安くなっていた時期だ。それと比べれば大戸屋は600〜700円でも高かった。それでも好んで通った理由はやはり味の良さだ。現在は牛丼チェーンをはじめ低価格チェーン店の味も大幅に向上し、うまさという大戸屋の優位性は相対的に下がったといえるが、味で完全に負けているとは思えない。ではどこで負けているかというと、回転率だ。

飲食業は回転率で決まる

 回転率で最も分かりやすいのが牛丼チェーンだ。注文をすると1分で商品が提供される。定食のような多少時間かかるものでも5分もあれば出てくる。

 現在は1つのお店で多様なメニューを出すより、メニューを絞り込み専門店化して味と提供スピードを上げるお店が増えている。つまりは生産性のアップだ。筆者の好きなトンカツチェーンの「かつや」は、「からやま」という唐揚げ定食のチェーンも展開している。同じ揚げ物でもあえて別々に展開しているわけだ。価格帯も大戸屋より低い。それに比べると大戸屋の立ち位置はなんとも中途半端と言わざるを得ない。

 大戸屋は和洋中の揚げ物から焼き物にいため物、生魚を使ったメニュー、さらには麺類やデザートと幅広いメニューを提供している。しかもそれらを店舗で手作りしていることから、圧倒的に提供のスピードが遅い。

 多様なメニューを提供することから厨房(ちゅうぼう)の設備が多数必要となり、その分コスト高となる。厨房スペースも余分に必要で座席数を削ってしまう。加えて、メニュー数の多さはスタッフの研修コストを引き上げ、厨房のオペレーションを複雑にする。結果として限られたメニューを作るお店と多様なメニューを作るお店では、提供にかかる時間が大きな差となって現れる。

 このように、大戸屋はメニューを絞り込んだお店と比べると、回転率で極めて不利であることが分かる。

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