大戸屋の赤字転落、原因は「安すぎるから」?:専門家のイロメガネ(4/7 ページ)
定食チェーンを運営する大戸屋HD(以下、大戸屋)が赤字に転落した。2019年9月期の中間決算では、上場来初の営業赤字として大きく話題に。特に値上げによる客数の減少が赤字の原因と指摘されている。しかし赤字転落の本当の原因は、値上げが足りない事にある。つまり高いからではなく「安いから」赤字になっているということだ。
俺のフレンチは4回転で黒字?
立ち食いで格安フレンチを提供して一世を風靡(ふうび)した「俺のフレンチ」は、回転率で勝負する業態だ。2年連続で赤字に転落すると報じられているペッパーフードサービスが運営する「いきなりステーキ」も、考え方としてはまったく同じだ。
「俺のフレンチ」は原価率をあえて高めることで、価格に対して素材や料理の質を高めて集客力を強化した。結果として客一人あたりの粗利は少なくても、多数の客が次々に訪れれば、つまり回転率が高ければ結果として利益が出るビジネスモデルだ。
「俺のフレンチ」がマスコミで盛んに取り上げられて大行列が発生し、お店にまったく入れないほど大人気だったころ、たまたま見かけたドキュメンタリー番組でもこのカラクリが説明されていた。客が一回転だと赤字、二回転でも赤字、三回転目か四回転くらいでやっと黒字になる、といった仕組みが数字と共に説明されていた。売り上げが増えればそりゃ黒字になるだろう、と思うかもしれないが、回転率で示されたことで思わず「なるほど!」と納得してしまった。
高級レストランは回転率が低い
高級レストランならばランチに一回転程度、夜も二回転いくかどうか、といったところだろう。平日ならば12時からの一時間がピークタイムで、牛丼店のように1分で提供して5分で食べて帰る状況とは全く違う。
平日のディナーも仕事が終わってから7時ごろに食事がスタートと考えれば、二時間でコース料理を食べ終えても次に席が空くのは9時から9時半程度になる。この時間からさらにディナー客がどれだけ入るか、と考えると、よっぽどの人気店でもなければ満席は厳しい。食べ終わりが11時を過ぎてしまうからだ。
「俺のフレンチ」と高級フレンチの違いは薄利多売か、一人から多くの代金をもらうかの違いだ。薄利多売というありきたりな発想も、高価格が当たり前のフレンチに導入すれば立派なビジネスモデルになる。
※俺のフレンチは現在着席する形へとスタイルを変えつつも、居酒屋のように二時間制の導入で高い回転率を維持しているという(俺のフレンチ"高品質・激安"なのに儲かる秘密 | PRESIDENT WOMAN 2019/08/22)。
関連記事
- 伸び悩むコロワイド、大戸屋HD株式の買い付けは「青田買い」?
飲食店経営を手掛けるコロワイドが、大戸屋HDの株式を買い付けを行ったと発表した。大戸屋HDの発行済み株式のうち18.67%を取得し、筆頭株主になる。ともに業績が伸び悩む中、どういった狙いがあるのか。 - 日本のタブーに触れた「バカッター」たち
繰り返されるバカッター騒動、バイトテロは、日本のタブーである「食べ物を大事に」に触れたから炎上した。欧米で、人種差別や動物虐待が炎上しやすいように、日本では「食べ物」がポイントだ。 - ちょっと前までチヤホヤされていた「いきなり!ステーキ」が、減速した理由
ブームの牽引役などとチヤホヤされていた「いきなり!ステーキ」が叩かれている。2018年12月決算は、8年ぶりに赤字。低迷の原因として、米国での閉店や類似店舗の増加などが指摘されているが、筆者の窪田氏は違う見方をしている。それは……。 - 藤原副社長、マツダが売れなくなったって本当ですか?
ここ最近のマツダには、聞いてみたいことがたくさんある。あれだけ出来の良いクルマを作りながら販売台数がなんで落ちるのか? MAZDA3とCX-30を批判している人は、まず乗ってみたのか聞きたい。あれに乗って、それでも高すぎると本当に思うのだろうか?全てを知り、なおかつ一番本当のことをズバリしゃべってくれそうな藤原清志副社長がインタビューに応じてくれることになったのである。第7世代は売れてないのか? を解説しつつ、真実を見ていく。 - SUVが売れる理由、セダンが売れない理由
セダンが売れない。一部の新興国を除いてすでに世界的な潮流になっているが、最初にセダンの没落が始まったのは多分日本だ。そしてセダンに代わったミニバンのマーケットを、現在侵食しているのはSUVだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.