大戸屋の赤字転落、原因は「安すぎるから」?:専門家のイロメガネ(6/7 ページ)
定食チェーンを運営する大戸屋HD(以下、大戸屋)が赤字に転落した。2019年9月期の中間決算では、上場来初の営業赤字として大きく話題に。特に値上げによる客数の減少が赤字の原因と指摘されている。しかし赤字転落の本当の原因は、値上げが足りない事にある。つまり高いからではなく「安いから」赤字になっているということだ。
損益分岐点を図に示すと以下の通りだ。
変動費の三角形が下にあり、その上に固定費が帯状に乗っている。これは「売上高に比例して増える変動費」と、「売上高に関わらず一定の固定費」を図に表したものだ。
そして、「売り上げの線」と「変動費の斜め線」の間にあたるものが「粗利」だ。これは「売上高 - 変動費 = 粗利」を表している。売り上げがゼロのスタート地点では固定費の分だけまるごと赤字(損失)だが、売り上げが徐々に増えて固定費を削り取るほど損失が減る。そして固定費を削り切った時点で損益分岐点となる。あとは売り上げが増えるほど利益が増える。
初見では分かりにくく感じるかもしれないが、先ほど説明した「粗利で固定費を削り取る」状況が一目で分かる図となっている。
余談となるが、いきなりステーキが既存店売上高が前年比マイナス40%(2019年11月)と苦戦している理由も、客単価と回転率の視点で考えると分かりやすい。競合店が増えた、多数の出店で自社競合が起きた、飽きられたなどの原因が指摘されているが、そもそも客単価が非常に高いのだ。
公式Webで確認すると、全店共通メニューの中からステーキで一番安いものを選んでも、ミドルリブステーキが「200g定量カット × 6.6円= 1320円(税抜き)」となっている。税込みでは1500円近くとなり、同じく回転率で勝負する牛丼チェーンと比べれば単価は3〜4倍程度だ。
単価が上がるほどターゲットとなる客の分母は減る。つまり「低価格で高回転」は成り立っても、「高価格で高回転」は極めて難しいチャレンジングな業態だったことになる。結果論でしかないが、所得の高い都市部でコンパクトに展開していれば回転率を維持して赤字転落は免れたのではないかと思われる。
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