大戸屋の赤字転落、原因は「安すぎるから」?:専門家のイロメガネ(7/7 ページ)
定食チェーンを運営する大戸屋HD(以下、大戸屋)が赤字に転落した。2019年9月期の中間決算では、上場来初の営業赤字として大きく話題に。特に値上げによる客数の減少が赤字の原因と指摘されている。しかし赤字転落の本当の原因は、値上げが足りない事にある。つまり高いからではなく「安いから」赤字になっているということだ。
3カ月待ちのイタリアンも回転率を追及
3カ月待ちともいわれる人気イタリアンの「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」は、ランチ、ディナーともに2部制だ。銀座店ならば予約可能な時間は、お昼は11:30と13:30、平日の夜は18:30と21:00で固定されている。この仕組みで合計4回転を狙っている。
ランチもディナーも非常に中途半端な時間に設定されていて、客にとっては好きな時間に食事が出来ず不便だろう。しかし人気があること、そしてコストパフォーマンスの高い料理が提供されることを考えれば、このやり方は強気の殿様商売に見えて実は客にもお店にも合理的な仕組みだ。
ラ・ベットラは、執筆時点でコースの価格が税込み4400円と、銀座のイタリアンとしては激安だ。しかし回転率を高く維持できなければその分値上げせざるを得ない。値上げをしなければ利益が確保できず、最悪の場合はお店が潰れてしまう。つまり昼夜ともに2部制で4回転のシステムは、「うまい料理を安く出すから来店時間はちょっとだけ協力してくださいね」というスタンスであることが分かる。
大戸屋HDは19年10月、外食大手のコロワイドが筆頭株主になったと報じられている(10月3日の記事参照)。今後はコロワイドが更に株を買い増して吸収合併もあり得る状況だが、セントラルキッチン方式に力を入れるコロワイドと、店舗調理にこだわる大戸屋では営業スタイルに大きな隔たりがあり、いまだ先行きは不透明だ。
大戸屋は現状のままならば復活が厳しいことは間違いない。今後の変化が大胆な業態変更なのか、コストダウンや座席割りの変更など小さな変化に留まるのか分からないが、元大戸屋ファンとしては復活を期待したい。
執筆者 中嶋よしふみ
保険を売らず有料相談を提供するファイナンシャルプランナー。住宅を中心に保険・投資・家計のトータルレッスンを提供。対面で行う共働き夫婦向けのアドバイスを得意とする。「損得よりリスク」が口癖。日経DUAL、東洋経済等で執筆。雑誌、新聞、テレビの取材等も多数。著書に「住宅ローンのしあわせな借り方、返し方(日経BP)」。マネー・ビジネス・経済の専門家が集うメディア、シェアーズカフェ・オンライン編集長も務める。お金より料理が好きな79年生まれ。
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