売れるに決まっているダイハツ・ロッキーとトヨタ・ライズ:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/8 ページ)
一瞥(いちべつ)したときから「これは間違いなく売れる」と思ったが、案の定その通りで、正味1カ月に満たない11月の車名別販売記録で、堂々4位の7484台(一般社団法人日本自動車販売協会連合会調べ)。しかも受注だけで見れば、発売後1カ月の12月4日時点でなんと驚きの3万2000台(トヨタ自動車発表)。全盛期のプリウス並みの売れ方である。
さて、今回は珍しく機械構成に少し触れてみたい。というのも4WDと変速機がなかなかに贅沢(ぜいたく)な仕様になっているからだ。アウトラインを述べれば、基本的な構成は3気筒1リッターDOHCインタークーラー付きターボに補助変速機付きCVTを組み合わせ、4WDモデルにはRAV4に採用された電子制御式カップリング「ダイナミックトルクコントロール4WD」が搭載される。
まずはCVTからだ。このCVTはプーリーとベルトからなる主変速機と並列して遊星ギヤの副変速機が組み合わされるところがミソだ。ドリブン側のプーリーのシャフトは遊星ギヤ機構のサンギヤに直結する。このサンギヤと噛(か)み合うプラネタリーギヤを保持するキャリヤは、CVTと並列に置かれた一対の平歯車のドリブン側と共に車輪へと固定される。当然それを回す平歯車はドライブ側(クランク軸側)に直結されている。
分かりにくいだろうが、遊星ギヤを利用した機構なので構成は3要素ある。エンジンから入力されるドライブ側のシャフトにドライブプーリーとドライブ平歯車が、タイヤに動力を出力するドリブン側のシャフトにはドリブンプーリーとサンギヤが組み込まれ、その間にカウンターシャフトに組み付けられた平歯車とプラネタリーキャリアが挟まれて、ドライブ/ドリブン間の変速比を変える構造だ。
平歯車の変速比を司るサンギヤの制御因子はドリブンプーリー。つまり平歯車だけで動力を伝達したい時はCVTでドリブンプーリーの回転を落とし、サンギヤの回転速度を落とすことで、プラネタリーギヤキャリアの回転(つまりタイヤの回転)を加速することができる。また低速域はCVTに任せるために、平歯車の噛み合いを解除して使う。これについては「D-CVT」で検索すると作動原理を説明する動画がいくつもあるので興味のある方は探してみるといい。
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