“多方面外交”を進めていたのに台風が…… 幸楽苑は苦難を乗り越えて復活できるか:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/5 ページ)
一時期は落ち込んでいた幸楽苑が復活しつつあった。しかし、台風により工場が被災してしまう。試練を乗り越えて復興できるか。
台風の被害が深刻化した意外な要因
福島県は、台風19号の被害が特に大きかった自治体の1つとされる。12月20日に福島県危機管理部災害対策課が発表した被害状況即報(第66報)によれば、死者32人、重軽傷者59人を数えている。特に、阿武隈川に沿った中通り地域の被害が甚大だった。郡山市は都市圏人口が55万人と言われており、東北では仙台市に次ぐ2番目の規模を持つが、災害の規模も大きかった。
郡山市の人的被害は死者1人、重症者1人であった。しかし、県内の床上浸水1137棟のうちの956棟が同市に集中。全壊家屋も、県内1284棟のうち約半数の625棟を数える。
幸楽苑の郡山工場は、台風が通過した10月12日には全域が水没した。同工場は、150社ほどが集まる郡山中央工業団地に立地している。
郡山市が12月12日に公表した浸水区域図によれば、阿武隈川とその支流の谷田川、大滝根川の三角州に位置する郡山中央工業団地付近は、市内でも最も広範囲に浸水した地域であった。原因は、阿武隈川の上流側の2カ所の溢水と、支流との合流点付近の越水、谷田川の2カ所の堤防決壊だ。
市内に15ある商工団体の調査を郡山市が集計したところ、11月18日時点の被害総額は約362億円。そのうちの85%にあたる約308億円が郡山中央工業団地に集中した。
幸楽苑は本社も郡山工場のすぐ隣にあるが、どういう状況に置かれていたか。「10月の既存店売上高30.7%減」の意味するものも察しがつくだろう。
不幸中の幸いではあるが、郡山工場は浸水の被害も想定し、高さ約1メートルの土台の上に建てられている。そのため、工場の浸水は10センチ程度で、被害はほとんどなかったという。ところが電気の供給源が外にあり、地面に直接置いてあったため、浸水の被害を受けてしまった。
冷凍・冷蔵しなければいけない商品や原材料も、電気がなければ保存できないので、廃棄せざるを得なかった。
1986年の水害でも郡山中央工業団地は冠水した。国が約800億円を費やして「平成の大改修」と呼ばれる阿武隈川の堤防整備を行ってきたが、今回の被害を防ぐまでには至らなかった。想定した以上の豪雨が降ったこともあるが、工事が未着手だった無堤防の場所が残っており、そこから水が流れ込んでいる。
その他の郡山中央工業団地の被害はどうなっているのか。パナソニックの郡山工場では、2メートルの壁を越えて川の水が浸入。19年中に一部再開を見通していたが、20年にずれ込みそうになっている。このように、いまだに復旧途上の工場もあるほど被害は甚大だ。
今後は、郡山中央工業団地内の地下に、大量の雨水を一時的に溜めておいて、晴天になったら下水として川に放出する調整池を整備するといった対策も必要だろう。
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