2019年デビューの良かったクルマ(前編):池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)
さて、恒例の新年企画は、1日と2日の連続で2019年に乗って良かったクルマについて書いてみよう。基本的にデビュー順だ。
ダイハツの新時代を開くタント
7月9日にはダイハツからタントが発売された。現在の軽自動車は、各社ルーフの高さで3つのバリエーションをそろえるのが通例だ。ダイハツでいえばミラとそのバリエーションが最も背が低いモデルになる。真ん中に当たるのがハイトワゴンと呼ばれるムーブ。そしてそれを越えるスーパーハイトワゴンにあたるのがこのタントだ。子供を迎えに行って自転車を立てたまま積めることがうたい文句だ。この上に法規の限界まで車高を高くしたウェイクがあるが、これは各社が必ずしも持っているわけではない。
タントはもうとにかく広い。運転席からフロントグラス越しに見える景色は電車かバスのようだ。開放感なら、並みのBセグメントでは全く太刀打ちできない。
さてこのタント。ダイハツの大改革であるDNGAの記念すべき第一弾である。コモンアーキテクチャーを用いた一括企画によって、あらかじめモデルラインアップ全てのバリエーション要素を想定し、設計を固定する部位と可変にする部位を織り込んでいる。
特にダイハツらしいのは、高齢者や体の不自由な人に向けた、介護・福祉的な機能を基礎設計に盛り込むことによって、これまで特殊車両として高価になりがちだった仕様を、ぐっとリーズナブルで使いやすいものにしたことだ。世の中の人々の暮らしを照らそうというダイハツの新スローガン、「Light you up」が見事に体現されていて、筆者はとても心を打たれた。
走りはダイハツらしい穏やかなもので、「走る・曲がる・止まる」に原理的でありたい人には元よりお勧めしないが、日々使う便利な道具としてのクルマを求める人にはとても優しいクルマである。
さて、後編は引き続き明日。取り上げるのは、9月17日発売のカローラ・シリーズと、10月24日発売のCX-30である。
関連記事
- 日本に凱旋した北米マーケットの大黒柱RAV4
トヨタ自動車の新型RAV4は北米で屋台骨を支える最量販車種。無骨な方向に進化し、大型化して日本に戻ってきた。3種類の四輪駆動方式の違いと特徴はいかに。 - MAZDA3 一番上のエンジンと一番下のエンジン
MAZDA3のことはすでに書き尽くした感もあるのだが、国内仕様の試乗会に行ってみたら思わぬ伏兵が待っていた。今回の試乗会の主役はXだったはずなのに、いきなり予定調和が崩れる。SKYACTIV-G 1.5を積んだクルマが素晴らしかったからだ。箱根で行われた試乗会では、乗る人乗る人に「1.5良いねぇ」と言われまくったマツダの人達は、極めて複雑な表情だった。 - 新型タントデビュー DNGAって一体なんだ?(後編)
多くの人が「新世代プラットフォーム」の名前だと勘違いしているが、DNGAはトヨタのTNGAと同様に、企業まるごとの強靭化計画であり、設計や生産のみならず、部品調達や人材教育まで、ダイハツの企業経営全体を強化する新しい経営思想だ。10%以上の大幅なコストダウンとともに、将来の開発や改造を最初から織り込んで設計されている。その効果は、タントでも福祉車両に見ることができる。 - ダメなカローラと良いカローラ
旧型のカローラと、TNGAベースの新型カローラは月とすっぽんくらいに違う。2010年前後デビューのトヨタ車の出来はありていにいってひどい。新型カローラシリーズは、だいぶ素晴らしい。完璧とはいわないが相当に良い。先行して登場したカローラ・スポーツで感じた違和感はどのようになったのか。 - カローラ・セダン/ワゴンが意味するもの
最量販車種の座をプリウスに奪われ、ファミリーカーの本流の座はノア/ボクシーに奪われた。気がつくとカローラは「年寄り向けの地味なクルマ」でしかなくなっていた。さらに世界各国で販売されるカローラは、地域によって求められるキャラクターが異なる。「スポーツ」「高級」「取り回し」の3つを同時にかなえるクルマを目指さなければいけない宿命を持ったカローラ。TNGAでハード的には対応を進めたが、問題は「自分のものにしたい」と思わせるキャラクターが立っているかどうかだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.