2019年デビューの良かったクルマ(前編):池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)
さて、恒例の新年企画は、1日と2日の連続で2019年に乗って良かったクルマについて書いてみよう。基本的にデビュー順だ。
MAZDA3 毀誉褒貶(きよほうへん)だって話題のウチ(笑)
この連載をご覧の方ならすでにご存じの通り、筆者の中では、MAZDA3はとても評価の高いクルマである。走る・曲がる・止まるの領域において、筆者が理想とするクルマの動き方はMAZDA3が目指す方向ととても近く、「ああ、そうだその通り」と思うことが極めて多い。
まず馬鹿っ速いクルマはいらない。例えば、シトロエン2CVは馬力のバリエーションがいくつかあるが、だいたい30馬力程度。鼻で笑うような数値だが、驚くほどスポーティに走れる。雰囲気だけでなく下りだけならリアルに速いし、とてつもなく楽しい。
筆者はそういう好みなので、現代のクルマにパワー不足はまず感じない。だから蹴飛ばされるような加速とか、大パワーとかが好きな人は多分筆者の評価軸と合わない。残念だがそれは仕方ない。
最大馬力やトルクがあったっていいが、大事にしているのは小負荷域のレスポンスだ。アクセルをゆっくり5ミリ踏み足した時のエンジンの振る舞いや、あるいは高級車だったら、豊かでレスポンスの良いトルクを自在にコントロールすることで、交差点を徐行スピードで左折するような場面で、微細なロール(ボディの横方向き)とピッチ(前後傾き)をおだやかにキレイにつなげることのできるパワートレインなのだ。そういうところがちゃんとしていないと嫌なのだが、マツダは基本的にここをちゃんとやってくれる。
ラゲッジスペースの狭さとか、後方視界が悪いとかの指摘は筆者も何度か目にしていて、それはその通りだと思う。けれどもマツダはそれを気づかずにやっているわけではない。そういう実用性を求めるならばフォルクスワーゲンのゴルフを買えばいいし、もっといえばトヨタのプロボックスはそういう性能をとことん突き詰めている。
けれども、そういう実用本位は見方によっては貧乏くさい。魂動デザインからも分かるように、マツダは道具に徹したクルマを目指しているわけではない。ただし、もちろんクルマに道具としての側面が不要だという人は極めて少ないし、人それぞれのライフスタイルがある。そこで、マツダの流儀を逸脱しない範囲で、もう少し実用性の高いニーズにはCX-30を用意した。
一方、MAZDA3では、削った実用性のリソースをボディ剛性やデザインに割り振っている。そういう立ち位置のクルマはマーケットに久しく無かった。多分RAV4と対極にあるクルマだ。穴はいっぱいあるが、惚(ほ)れ込める部分があちこちにある。そういう方向性に納得行く人が買えばいいクルマだと思う。
何度も読んだよという人もいるだろうが、実際に乗って素晴らしいポイントを簡単に挙げておこう。1つ目はこのクラスとしては世界一といえるシートの出来。2つ目はリニアリティを別次元に引き上げたブレーキ。3つ目はボディのNVH(音と振動)コントロール。4つ目は、デザインと機能が正しく折り合いをつけた計器操作系インテリア。このあたりは抜きんでていると言える。
MAZDA3は多分クーペとホットハッチという2種類のクルマを統合したようなものだと思う。具体的にいえば、SKYACTIV-Xを搭載するモデルはかつてのシルビアやセリカと同じジャンルのクーペに属し、SKYACTIV-G 1.5はファミリアやシビックの属するホットハッチ。それくらいエンジンによって性格が違う。本来はこれに加えてツアラーとしてのSKYACTIV-Dが入るのだろうが、これはCX-30用にアップデートされたエンジンの搭載を待ちたい。年次改良では確実に搭載されるだろう。
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