デザートを先に食べるイスラエル人に学ぶスピード経営:イスラエルに学ぶビジネス(2/5 ページ)
それなりの肩書のある(権限のありそうな)日本企業幹部が海外ベンチャー企業を訪問し、その独自技術や強みの説明に興味を持ったとしても、その場で提携やPOC(Proof of Concept、日本的にはトライアル)へ進むことを意思決定する人はほぼいない。大半が「持ち帰って検討する」という反応を示すことは、シリコンバレーだけではなく、イスラエルでもよく聞かれる「日本あるある」である。
「明日がどうなるか分からない」のが日常
旧約聖書によれば、紀元前に彼らの祖先が現在のイスラエルのあるカナンの地へ移住したが、大飢饉に見舞われ、人々はエジプトに逃れた。一時は厚遇されるものの、王朝が変わってからは彼らは奴隷としての生活を強いられることになる。
その後、モーセに率いられて再びカナンの地に戻り、定着して王国を建国するが、アッシリア、バビロニア、ペルシャ、ローマなどの帝国に相次いで支配され、紀元70年以降はこの地を追放される。特にヨーロッパでは、例えば疫病の流行も他宗教であるユダヤ人の罪とされたり、従事する職業にも制限があったりして、ユダヤ人は社会の下層で様々な迫害を受けてきた。
そのような歴史を経て1948年に独立宣言をするまでの間、ユダヤ人は国という自らの居場所を持っていない。長い歴史の中で、常に他民族・他宗教・列強諸国の影響を受けて来たユダヤ人にとっては、「明日がどうなるかわからない」のが日常であったのだ。
その結果、常に今を大切にし、その場その場で最善と思われる判断をしながら生き延びてきたのである。独立宣言後すらも、彼らは70年の間に4回の戦争を経験しており、今なお、敵対する勢力が支配するガザ地区からいつロケット弾が飛んでくるか分からない日常を暮らしている。その意味では彼らを取り巻く「将来の不確実性」は、少なくとも彼らの意識の中では過去の歴史とあまり大きく変わってはいない。
この感覚が染み付いているため、仮に判断材料とする情報が少なかったとしても、彼らはその時の情報をもとに迅速に判断を下すのが当たり前だ。時間を掛けることはかえって彼らにとっては「リスク」なのである。
この特徴を表して、「イスラエル人は(食事は前菜から順番に食べるのではなく)デザートを先に食べる」といわれる。まず、美味しいところを取ろうとする、それが彼らの生き延びてきた知恵であり、ビジネス上のスピードの秘密でもある。仮に判断結果が間違っていたとしても、それは次に挽回すればいいと考え、適宜方向修正をするのである。
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