デザートを先に食べるイスラエル人に学ぶスピード経営:イスラエルに学ぶビジネス(3/5 ページ)
それなりの肩書のある(権限のありそうな)日本企業幹部が海外ベンチャー企業を訪問し、その独自技術や強みの説明に興味を持ったとしても、その場で提携やPOC(Proof of Concept、日本的にはトライアル)へ進むことを意思決定する人はほぼいない。大半が「持ち帰って検討する」という反応を示すことは、シリコンバレーだけではなく、イスラエルでもよく聞かれる「日本あるある」である。
継続性を疑わない日本人
一方、日本は他国の植民地となったことがない数少ない国の1つである。以前、海外の知人に「日本の独立記念日はいつか?」と聞かれたことがあり、その時は想定外の質問に戸惑った。改めて考えると、我々日本人は、他民族、他宗教、他国に支配されるという経験をしていない。外部の力による大きな強制的変化をすることもなく、独自の文化や民族が維持できているため、無意識のうちに「明日も昨日とほぼ変わらない日が来る」と思い込んでいるのではないだろうか。
戦後74年間にも渡り、同期間4回の戦争を経験したイスラエルとは異なり、日本人は幸いにして平穏な日々を過ごしてきた。平和的外交が難しい近隣諸国がある、という意味では、日本の地政学的リスクはイスラエルの状況とあまり変わらない。しかし、何らかの国際紛争に日本社会・日本の国土が現実に巻き込まれる可能性がある、という感覚を持つ日本人は少ないだろう。
その平穏な日常の継続性に慣れてしまい、未来の不確実性に思いを馳せることが少ないことが、平和を享受できる日本の良さであると同時に、”判断に時間を掛けたり、判断の先送りをすることにあまり疑問を持たない”という日本人のスピード感の乏しさにつながっている。明日が不確実であれば、いくらのんびりした日本人といえども「先送り」はできない。
高度経済成長時代の日本では、原材料を輸入し、加工して輸出する、という比較的シンプルなビジネスが主流であり、更に技術の優位性を持っていたことも相まって、そこには「判断に時間を掛ける」ことのデメリットがさほど顕在化することはなかった。
しかし、インターネットがあらゆるビジネスのインフラとなり、データの量やAIがゲームを支配するようになってきた現在、Winner Takes Allといわれるような環境でのビジネスを戦うには、日本人、日本企業の「判断の遅さ」は致命的になってきたことは、改めて自覚する必要がある。技術進歩やビジネス環境の変化のスピードが早いがゆえに、それに追随できるスピード経営をイスラエルに学ぶことは有効なのである。
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