デザートを先に食べるイスラエル人に学ぶスピード経営:イスラエルに学ぶビジネス(5/5 ページ)
それなりの肩書のある(権限のありそうな)日本企業幹部が海外ベンチャー企業を訪問し、その独自技術や強みの説明に興味を持ったとしても、その場で提携やPOC(Proof of Concept、日本的にはトライアル)へ進むことを意思決定する人はほぼいない。大半が「持ち帰って検討する」という反応を示すことは、シリコンバレーだけではなく、イスラエルでもよく聞かれる「日本あるある」である。
イスラエルとビジネスをするときのヒント
最後に、本トピックに関連して、イスラエルとビジネスをする方々に役に立つかもしれないTIPSを紹介する。
イスラエル企業と取引をする(日本がイスラエルから何かを購入する)とき、典型的な契約の条件として、「契約時に頭金40%、仕事が終わった時点で40%、納品・検収後に残り20%」の支払いをイスラエル企業は求めてくる(%の数字は一例)。
日本企業同士の契約であれば、支払い条件は、契約内容を履行し、成果物の納品、発注側による検収後、翌月、翌々月払い、という流れが一般的だろう。日本企業が頭金を支払うという契約をすることは稀である。
しかし、イスラエル企業は必ずDown Payment(頭金)を求めてくる。これも、明日の不確実性を考え、取れるものは今取る、という彼らの行動様式なのである。日本のインテグレータのように、年度初めに契約し、ほぼ1年間自費で仕事をして、その支払いは年度末にやっと実行される、という条件を受け入れるイスラエル企業はない。
この行動様式を理解すると、逆に、Down Paymentが日本では難しい(商習慣として一般的ではない)ことを理解させた上で、Down Paymentに応じるから代わりに値下げしろ、という交渉をすることも可能となる。彼らは「将来の100」よりも「今の90」を取る。これは実際に筆者が使った有効な手であり、参考になれば幸いである。
筆者プロフィール:新井均
NTT研究所、NTTコミュニケーションズにて研究開発・サービス開発に従事後、外資系通信機器メーカー、新規参入通信事業者でのマネジメントを歴任。2007年に、イスラエルの技術を用いてモバイルサービスを提供するネクシム・コミュニケーションズを立ち上げ、2014年に株式譲渡。以降、7年間のイスラエル企業との事業経験を踏まえてイスラエルスタートアップと日本企業とのビジネスマッチング支援業務を行う傍ら、イスラエルに関する情報を発信。日本MIT会理事、日本イスラエル親善協会ビジネス交流委員。
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