積み残した2019年の「宿題」 20年の鉄道業界、解決したい“5つの課題”:杉山淳一の「週刊鉄道経済」新春特別編(1/5 ページ)
2020年を迎えたが、鉄道分野では19年から停滞したままの「宿題」が山積している。リニア中央新幹線の静岡工区、長崎新幹線の佐賀県内区間、そして過去の災害で被害を受けた路線の復旧……。20年はこれらの問題解決に向けた動きが進むことを期待したい。
2019年は楽しいこともありました。でも、つらいこともありました。気を取り直して20年も張り切って参りましょう。……そんなきれい事では済まない。20年に解決してほしい「鉄道分野の課題」を振り返る。
2019年の宿題「リニア中央新幹線 静岡工区」
発端は5月30日のJR東海の社長会見だった。リニア中央新幹線の静岡工区において、静岡県から着工許可が出ない。このままでは27年の開業に間に合わない、という趣旨だ。これに対して静岡県知事は6月11日、「事業計画の年次を金科玉条のごとく相手に押しつけるのは無礼千万だ」と批判する。この2つの報道によって、JR東海と静岡県との交渉が不調だと表面化する。
静岡県が着工を認めない理由は大井川の水利と環境問題だった。リニア中央新幹線のトンネルは大井川の水源を貫く。大井川水系の水は静岡県民60万世帯と農工業で使っている。この水は生活と経済の源泉だ。譲れない問題だ。これに対し、JR東海はトンネル湧水の全量を戻すと約束した。
ところが静岡県は「全量を戻す方法、しかも水温、水質を適切に放出する方法を示せ」と問いただした。口約束だけでは済まさないぞ、という強い意思がある。しかし客観的に見れば、静岡県は内心で「そんなことができるわけがない」と踏んでいるように見える。もともとできっこないと分かっている要求を突きつけて、その要求をのめば「できるわけがない、証明しろ」という。
何しろ自然が相手だ。本来は確実な約束などできない。要求した静岡県も過激すぎるけれども、応じたJR東海もうかつだった。ここからボタンのかけ違いが続くのだ。その後、国土交通省も交えた場で、JR東海は工事初期段階のトンネル湧水全量戻しはできないと回答し、静岡県側の不信感を招いた。
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