もうけは悪、補助金漬け――そんな地方都市で実績上げる、サツドラ社長の戦略:課題山積の地方こそ、グローバルで戦える(3/4 ページ)
「課題山積の地方こそ、グローバルで戦える」――。そう意気込むのは、北海道を中心に国内約200店舗のドラッグストアを運営するサツドラホールディングスの社長を務める富山浩樹氏だ。地方都市の生き残りを賭けて戦う富山氏に、戦略の詳細を聞いた。
課題山積の地方こそ、グローバルで戦える
喜多羅: 「グローバルで稼ぐ」という点ではどんなことを考えているのですか?
富山: 例えば、スイスやスウェーデンは北海道と同程度の人口で、面積は半分、でもGDPは倍なんですよ。彼らは手厚い社会保障に加えて時計などのブランド価値を自ら育て、グローバルで稼いでいる。
じゃあ、「僕らにできる戦い方は何か」と考えたときに、日本は「社会課題先進国」といわれているところが強みじゃないかと思うわけです。30年後には先進約17カ国が今の日本と同じくらいの高齢化率に達する見込みなわけですが、北海道は、日本の中でも超高齢化地域。過疎化も医療費負担もワーストグループなんです。つまり、グローバルに先駆けて課題解決に取り組み、そのノウハウを輸出したり、モデルエリアとしてグローバル企業に活用してもらったりできる可能性があるわけです。
そこで行政がすべきは、補助金よりも徹底的な規制緩和で民間企業の活力やトライを引き出すことですよ。
友岡: これまでの社会システムが時代にそぐわなくなって、組み替えるべき時期に来ているということですね。国主導ではスピードが合わないので、地方経済圏でトライしていかなきゃいけない。
富山: 実は、地方の首長などと連携するのが一番の近道だと思っています。地方の経済界も、団塊の世代が中心の地域と、団塊ジュニアが中心の地域とで「危機感の違い」を感じますが、北海道は幸い世代交代が進んできました。僕ら世代と話の通じる首長とさまざまな仕掛けができるのではないかと考えています。
例えば、18年から余市町長を務める齊藤啓輔さんは、30代で先進的な考えの方。「議会は後でなんとかする」というスタンスでスピード感を持って規制緩和を進め、民間企業がどんどんトライできるようにしているんですよ。だから今、余市にはたくさんお金が集まっています。余市がこれだけできるんだから、札幌だってできるはず。そういう実例をたくさん作っていくことだと思います。
地方を縛る、「もうけちゃいけない」という価値観
喜多羅: これから先、子供たちにどんな国を残していきたいか考えたときに、「稼げる国」にしていきたいと思うよね。
小島: そう。稼いでいいんだっていうね。地方に行くと「もうけちゃいけないバイアス」が強くてびっくりすることがあるね。
富山: 北海道は本当にそうなんですよ。「稼ぐ」ということに対して罪悪感を持つ方が多いです。例えば、知床が世界遺産に選ばれたとき、観光客からお金をいただいてもっと素晴らしい場所にしようとすればいいのに、「自分たちが何気なく見てきたものでお金をとっていいのか」という話になってしまって、価値をお金に換えられない。
小島: 謙遜もあるのかもしれないけど、自分たちの価値に気付けないと損をしますね。雪の価値は、雪が降らない国に行くと実感できる。やっぱり外へ出て行って、“外のものさし”を知らないと分からない。
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