2020年の中国自動車マーケット(前編):池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)
世界の自動車販売台数の3分の1を占める中国で変調が起きている。中国マーケットで起きていることをちゃんと押さえることが第一。次いでその原因だ。そしてそれらが20年代の自動車産業にどんな影響を与えそうなのかを考察してみよう。
このあたりも切り口は多様にあって、そう一筋縄ではいかない。例えばEVのみに限っていえば中国のグローバルシェアは58%と圧倒的。つまり、中国マーケットの異変はEVプレイヤーに最も向かい風が強くなる。そこへ持ってきて、中国政府の予算不足によって補助金の段階的減額が始まっているため、自動車全体が落ち込む中でも特にEVの落ち込みは大きい。それはつまり、現状EVを主力にしていたり、今後の事業展望として中国でのEV販売を頼りにしていたりした会社は、より状況が深刻になるだろうということだ。
ちなみに今回は世界経済のさまざまな数字を取り扱う都合上、出典をいちいち明らかにするとあまりに煩雑だ。筆者は国際情勢や経済の専門家ではないので、クルマの話ならともかく、国際情勢や経済の話となると一次情報に当たることが難しい。可能な限り政府や政府系機関の数字を用いるが、時事的な数字は各国の新聞社などの記事を比較しつつ妥当性を判断して引用する。誠に申し訳ないが、今回に関しては統計的な正確性については大目に見てもらいたい。
この記事の目的は、あくまでも中国マーケットで起きていることをちゃんと押さえることが第一。次いでその原因だ。そしてそれらが20年代の自動車産業にどんな影響を与えそうなのかを考察してみることだ。
懸念される落ち込みの長期化
18年の時点では、中国での自動車ビジネスは、一時的に販売が落ち込もうと、中期的には回復すると信じられていた。つまり、落ち込みは一時的なもので、数年後には再び世界で一番クルマが売れるマーケットに返り咲くと見られていた。おそらく超長期でみればその見立ては正しいだろうが、どうも今回ばかりは、不調は予想外に長引きそうな流れだ。
象徴的なのは米中貿易戦争だ。これが米中の経済におけるよくあるつばぜり合いであれば、あまり極端なことにはならないのだろうが、つぶさに調べていくとそういうレベルの争いではなさそうだということが分かってきた。これは中国型の社会主義市場経済と、米国型のオーセンティックな市場経済のどちらかが倒れるまで続くデスマッチなのではないかと筆者は見ている。昨年末までの推移でみると、どうも米国の勝利が見えてきているように思える。
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