2019年の企業倒産、11年ぶり増加 「人手不足」関連は過去最多:負債総額は最少
東京商工リサーチの「全国企業倒産状況」によると、2019年の倒産件数は、前年比1.7%増となり、11年ぶりに前年を上回った。一方、負債総額は過去30年間で最少を更新。「人手不足」関連倒産件数は過去最多だった。
東京商工リサーチが1月14日に発表した「全国企業倒産状況」によると、2019年1〜12月の倒産件数(負債総額1000万円以上)は、前年比1.7%増の8383件となり、11年ぶりに前年を上回った。一方、負債総額は4.1%減の1兆4232億3800万円で、過去30年間で最少を更新。また、「人手不足」関連倒産件数は調査開始以来最多を更新した。
全国の倒産件数は、リーマン・ショックの影響があった08年以来の増加だった。ただ、近年の倒産件数は減少傾向が続いており、19年の件数は過去30年間で見ると少ない水準。1990年、2018年に次ぐ3番目に少ない件数だった。
負債総額は、負債10億円以上の大型倒産が185件と減少傾向にあることから、過去30年間で最少となった。負債額の最大は、MT映像ディスプレイ(大阪府)の1033億2600万円だった。
産業別にみると、消費税率の引き上げに伴う影響が注目された「小売業」が8.6%増の1230件、「サービス業他」も2.2%増となり2569件だった。「建設業」は11年ぶりに増加し、0.9%増の1444件。また、「製造業」(0.9%増)と「情報通信業」(6.2%増)も10年ぶり、「運輸業」(6.7%増)は7年ぶりに増加に転じた。
業種別では、「織物・衣服・身の回り品小売業」(18.5%増)、「繊維工業」(18.3%増)とアパレル関連で増加率が高かった。また、「飲食料品小売業」(12.0%増)や「飲食業」(7.9%増)と、消費関連の業種でも倒産件数が増加した。
「人手不足」関連倒産は、最多だった18年を上回る426件だった。内訳をみると、代表者や幹部の死亡、病気入院、引退などによる「後継者難」が2.8%減の270件で最多。人手確保が困難で事業継続できなかった「求人難」が32.2%増の78件、中核社員の退職がきっかけとなった「従業員退職」が83.3%増の44件、賃金など人件費の増加によって収益が悪化した「人件費高騰」が30.7%増の34件。
東京商工リサーチは「人手不足が企業にとって多様な面で影響していることを示している。中小企業の多くは、人材確保への賃金引き上げが収益悪化に直結する構図に陥っている」と指摘している。
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