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賃金は減り、リストラが加速…… ミドル社員を脅かす「同一労働同一賃金」の新時代:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/5 ページ)
2020年は「同一労働同一賃金」制度が始まる。一方、厚労省が示した「均衡待遇」という言葉からは、正社員の賃金が下がったり、中高年のリストラが加速したりする可能性も見える。そんな時代の変わり目には、私たち自身も働き方と向き合い続ける必要がある。
2020年がスタートしました。「子年」。新しい十二支のサイクルがスタートです。
19年の夏頃からでしょうか。「時代の大きな変わり目が来ている」――。そんなことを肌で感じてきました。今当たり前と思っていることが当たり前じゃなくなり、「へ〜、そんな時代があったんだ〜。信じられない〜」などと遠いまなざしで過去を懐かしがるような。そんな変化が始まる年になると個人的には考えています。
20年の大きな目玉といえば、4月から施行される「同一労働同一賃金制度」です。本来、同一労働同一賃金とは、職務内容が同じであれば、同じ額の賃金を従業員に支払うという制度です。
「正規か非正規かという雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保し、同一労働同一賃金の実現に向けて策定するものです」
これは厚生労働省が示した「同一労働同一賃金ガイドライン」の冒頭に書かれている文章ですが、「均等・均衡待遇」という文言は、実に大きな意味を持ちます。
いい意味で? いいえ、悪い意味で。
同一労働同一賃金に「均等」だけではなく「均衡」という2文字が入ることは、働く人の賃金に悪影響を与える可能性が高まってしまうのです。
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