「もう、諦めるしかない」 中高年化する就職氷河期世代を追い込む“負の連鎖”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/5 ページ)
40歳前後になった「就職氷河期」世代に対する支援に、国を挙げて取り組むことを安倍首相が表明した。しかし、就職時の不況や非正規雇用の拡大など、さまざまな社会的要因によって追い詰められた人たちの問題は根が深い。実効性のある支援ができるのか。
生活保護に必要な追加支出は20兆円程度――。
これは今から11年前の2008年に、NIRA総合研究開発機構が報告書「就職氷河期世代のきわどさ」の中で、「氷河期世代がこのまま高齢化すると……」という前置きで示した数字です。
当時、就職氷河期に増加した非正規雇用者は、100万人を上回る規模で残存していました。低賃金かつ不安定。十分な年金が確保されない非正規雇用の人たちが高齢化すると、生活保護受給者が増えることが予想され、「20兆円程度の追加的な財政負担」が発生するという試算結果を提示したのです。
たまたま「就職時の景気が悪かった」というだけで非正規雇用になった氷河期世代は、既に40代に突入。彼らを救い出す実効性ある政策は行われないまま、“放置”され続けてきました。
そんな中、安倍晋三首相は3月、「社会がつくった氷河期世代」の支援に、国を挙げて取り組むことを指示。「わが国の成長・発展を支える原動力は人だ。人的資本の形成・蓄積を加速するとともに、人材を有効に活用していくことが重要。本年の骨太方針に位置付けてほしい」と述べたと報道されましたが、本気で「社会がつくった氷河期世代」の不遇さを改善してくれるのでしょうか。甚だ疑問です。
もちろん何もしないより「まし」かもしれません。
しかしながら、厚生労働省が17年度からスタートさせた「就職氷河期世代の人たちを正社員として雇った企業に対する助成制度」の利用率はわずか「1割未満」です。17年度は、約5億3000万円の予算のうち、利用されたのは765万円(27件)。18年度は10億7000万円に予算を倍増したにもかかわらず、12月末までで1億2800万円(453件)。惨憺(さんたん)たる結果です。
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