働き方改革で残業が減らない理由 ちっとも進まない「経営者改革」:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)
働き方改革について7割の人が「実感なし」と回答したアンケート結果が話題になった。「長時間労働の削減」が改革の代名詞のようになってしまっているが、本来はそうではない。生き生きと働ける社会にするために必要なのは「経営者改革」だ。
政府が進める「働き方改革」が「働かせ方改革」になっていると、常々公言してきましたが、そのひずみがあちこちで表面化し始めたように感じています。
経営者対象の講演会では「生産性向上」という言葉がまるで呪文のように繰り返され、働く人たちからは「残業が減らない」「持ち帰り残業が増えた」「賃金が上がらない」「非正規には恩恵なし」「女性が育児で辞めなくなったのはいいことだけど、女性たちに甘えが出てきた」「雇用延長で働かないおじさんが増えた」など、聞こえてくるのは不満ばかりです。
「部下に残業させられないから、結局、私が負担することになってしまいました。正直、しんどいです」
もともと残業代がつかない管理職の人から、こういったぼやきを聞くことも増えてきました。
2月に公開された日本能率協会のアンケート調査でも、7割の人が「働き方改革実感なし」と回答。年齢別では、20代が61.5%であるのに対し、40代は69.0%、50代では75.0%と、年齢が高いほど否定的な意見が増えていました。
もちろん中には「働き方改革、最高!!」とご満悦の人もいるかもしれません。しかしながら、何のための働き方改革なのか? 働き方改革のゴールとは何なのか? それらが周知の事実として共有されない限り、ひずみが生じて当たり前です。
そもそも「働き方改革」とは、働く人一人一人が「生き生きと働ける社会」、一人一人が「能力を発揮できる社会」、一人一人が「仕事って、いいね! と思える働き方ができる社会」になることで、人間の付加価値が引き出され、結果として「生産性」が高まること。
ところが実際には、「長時間労働の削減」が働き方改革の代名詞になってしまいました。
関連記事
- 「1カ月の夏休み」は夢? 日本人の“有給の取り方”がズレている、歴史的背景
月曜を午前半休にする「シャイニングマンデー」。経産省内で検討していると報じられたが、そんな取り組みは「無駄」。日本人は、世界では当たり前の「有給休暇をまとめて取る」こともできていないからだ。なぜできないのか。歴史をさかのぼると……。 - “めんどくさい女性”が働き方改革の救世主? 「ババア活用」のススメ
働き方改革を実感していない人が多いのは、「人生の邪魔をしない職場づくり」ができていないから。どうすればいいのでしょうか? 「細かい、おせっかい、空気を読まない面倒くさい人=ババア」が救世主になるのです。 - 「しつけで体罰」禁止? 褒める子育て? “美徳”に潜む現実
東京都が「しつけでの体罰」を禁止する条例案を提出した。さまざまな反応があるが、法制化しただけでは「体罰を容認する空気」はなくならない。啓発活動とともに、子育てをする親が追い詰められない社会にすることが必要だ。 - 減り続ける「管理職のイス」と“死亡率”急上昇のリアル
「管理職になりたくない」人が6割を占める調査結果が問題になっているが、管理職の椅子が減っている現状を考えれば、希望者は4割で十分。それよりも、管理職の在り方そのものを見つめ直す必要がある。 - 「日本が嫌い」になる外国人を増やす、穴だらけ改正入管法の欺瞞
外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案が成立。「移民政策ではない」とする矛盾を抱えて成立した法案には問題が多い。外国人を「よそ者」扱いする社会のままでは、日本を嫌いになる外国人が増えるだけではないか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.