「しつけで体罰」禁止? 褒める子育て? “美徳”に潜む現実:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/5 ページ)
東京都が「しつけでの体罰」を禁止する条例案を提出した。さまざまな反応があるが、法制化しただけでは「体罰を容認する空気」はなくならない。啓発活動とともに、子育てをする親が追い詰められない社会にすることが必要だ。
家庭内暴力による子どもの死が後を絶たない中、東京都が英断を下しました。「しつけでの体罰」を禁止する条例案を都議会に提出したのです。
条例案では体罰や暴言を「子どもの品位を傷つける罰」として禁じ、都の責務を「体罰などによらない子育ての推進」と規定。具体的には、保護者等の責務として「妊婦および乳幼児の保護者の健康診査の受診勧奨に応じる努力義務」のほか、「保護者が、しつけに際し、子どもに対して行う、肉体的苦痛または精神的苦痛を与える行為で、子どもの利益に反するもの」を禁止しました。なお、肉体的苦痛または精神的苦痛を与える行為には、当該の子どもが苦痛を感じていない場合も含まれます。
また、2018年3月、目黒区で5歳の女児が虐待死した事件などで、転居先の児相への引き継ぎが不十分だった反省を踏まえ、転居を伴う虐待事案を児相間で的確に引き継ぐことや、警察との情報共有についても明記。虐待の早期発見に向け、乳幼児健診の受診勧奨に応じることを保護者の努力義務としています。
今回の条例に「家庭内のしつけにまで介入するな!」「子どもを怒鳴ってもいけないのか?」とアレルギー反応を示す人は少なくありません。テレビなどに出演している識者の中には「愚策」と切り捨てた人もいましたし、罰則規定がないことで実効性を疑問視する人や、「どこまでがしつけで、どこからが虐待かを明確にする必要性」を訴える人もいました。
私はといいますと……、「いいじゃん、これ」と思うわけです。
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