ソフトバンク、楽天、DeNA ……IT企業とスポーツビジネス “三社三様”の関わり方:新連載 池田純のBizスポーツ(2/3 ページ)
スポーツとビジネスに詳しい池田純氏の新連載。昨今、IT企業が続々とスポーツに参入している。プロ野球ではソフトバンク、楽天、DeNAが球団を経営。他にはミクシィ、アカツキ、メルカリといった名だたる企業がスポーツ業界に参入し始めている。まずはプロ野球3球団の例から、背景を読み解く。
スポーツビジネスはお金になる
私がベイスターズの球団社長に就任した当初は「黒字化なんて絶対に無理」「ハマスタ買収なんて不可能」と言われ続けました。それが、たった8年前のこと。プロ野球の球団を持つのは「親会社の宣伝広告」のためであり「勝つことが最大のファンサービス」だといわれていた時代でした。
しかし、こうしたベイスターズの成功により、今や「スポーツビジネスはお金になる」という考え方が常識になりつつあります。同時に社会的なステータスも獲得でき、その周辺にも何かビジネスを広げていくチャンスが生まれるという意識が、IT業界に広まっているのです。サッカーJ1のFC東京に出資し、プロバスケットボールBリーグ・千葉ジェッツ船橋の経営にも参画するミクシィ。J1鹿島アントラーズを取得したメルカリ。J2のFC町田ゼルビアの経営に参画するサイバーエージェント。J2東京ヴェルディに参画し始めたアカツキ。ここ数年で次々と大きな動きが出てきています。
このようにゲーム事業からスポーツ事業を“本業”にする方向に舵を切りつつあるほど、スポーツ事業単体で成功を収めたDeNAに対して、“一世代前”にプロ野球に進出したソフトバンク、楽天は全く異なるアプローチでスポーツビジネスに取り組んでいます。あくまで“本業”をボアアップさせることで、スポーツを“本業”の価値向上に生かす形です。
楽天は米プロバスケットボールNBAのゴールデンステート・ウォリアーズとユニホームにロゴを入れる契約を結んだり、それによって楽天のビジネスの一環としてNBAの日本での放映権・配信権を取得したり、JリーグのECに絡んだりと、「楽天市場」という“本業”とスポーツのシナジーを追求しています。スポーツは、いわば“本業”の価値、規模を大きくするためのツールという在り方です。
かたやソフトバンクは携帯電話の会社から投資会社となり、巨額の資金を調達、投資しながら利益を生み出していく企業になっています。その1つの象徴が福岡ソフトバンクホークスといえるのではないでしょうか。これまで日本のプロ野球界は巨人が「最強」「盟主」であり、フリーエージェント(FA)選手の獲得競争をしたら絶対に勝てないといわれてきました。しかし、「ソフトバンクが出てきたら資金は青天井」といわれるくらいのどんでん返し、パラダイムシフトを起こしています。
19年の日本シリーズでも圧倒的な戦力差を見せつけ、巨人に対して4戦全勝し、日本一に輝きました。10兆円規模の投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の運営や米携帯会社スプリントの買収からも分かるように、ソフトバンクは日本にとどまらないビジネス展開を行っています。ソフトバンクにとって、プロ野球、スポーツは「日本最強」「世界最強」の会社だというブランドを浸透させる位置付けにあるように思えます。
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