マクドナルドとモスバーガー 「トマト」の使い方から見えた戦略の“決定的”な違いとは:飲食店を科学する(5/5 ページ)
ハンバーガー業界の2トップ「マクドナルド」と「モスバーガー」。原価率や広告宣伝費から戦略の違いが見えてきた。マクドナルドの圧倒的強さの秘密にも迫る。
マクドナルドとモスバーガーの人材不足への対応策
人材不足への対応は、飲食業に関わらず、日本のあらゆる業種においても急務の課題となっています。
マクドナルドでは特に「主婦(主夫)」の採用に力を入れています。18年12月には3万人であった主婦(主夫)を4万人に増やすため、採用強化を行っています。「クルー(アルバイト)体験会」「LINE応募」「Twitter質問箱」といったように、応募の心理的ハードルを下げ、母数(応募数)増加に対する取り組みにも力を入れています。
一方で、モスバーガーではシニアスタッフの雇用に力を入れています。また、リファラル採用(友人紹介)を行う専用のWebシステムを活用するといったように、多くのスタッフ獲得を実現しています。
さらに、モスバーガーの新たな取り組みとしては、ベトナムの大学との連携が挙げられます。5年間の在留資格である「特定技能」を活用して、日本の店舗で雇用・教育を行う「ベトナム・カゾク」をスタートさせています。この取り組みの興味深い点は、5年間の就労を終えて帰国したベトナム人スタッフを、ベトナム現地でも店舗スタッフとして再雇用しようとしていることです。そのため、現地法人との合弁会社設立に向けても動いているようです。
国内の人材不足解消と海外展開という2つの戦略を同時に進める新たな施策として、今後の展開に注目していきたいと思います。
省人化に向けた取り組み
省人化の取り組みとしては、モスバーガーではセミセルフレジなどの導入を進めています。マクドナルドでもお客さんが自分のスマホ等から事前にオーダーができるモバイルオーダーの試験的導入を進めており、2020年には全国に順次導入していく計画となっています。
教育面においては、スタッフの早期教育に使う「動画教育ツール」を強化するといった対策を行っています。
このように、両社では人材不足に対して「応募数の最大化」「省人化」「定着率向上」「生産性向上」を計画的に推進しています。この視点は今後あらゆる業界で必要な取り組みとなります。
売り上げアップにはマーケティング戦略がもちろん重要ですが、これだけでは飲食店の継続的な売り上げアップは実現できません。
絶えず話題となる新商品を投入して顧客を飽きさせないマーケティング戦略と、店舗力の根幹である人材力を強化していくマネジメント戦略。この双方に対して企業として計画的にしっかりと取り組んでいるからこそ、マクドナルドは既存店売上高49カ月連続プラス、営業利益250億円を達成できているのです。
著者プロフィール
三ツ井創太郎
株式会社スリーウェルマネジメント。「飲食店年商10億円最速突破経営塾」を主催。大学卒業と同時に東京の飲食企業にて店長などを歴任後、業態開発、FC本部構築などを10年以上経験。その後、東証一部上場のコンサルティング会社である株式会社船井総研に入社。飲食部門のチームリーダーとして中小企業から大手上場外食チェーンまで幅広いクライアントに対して経営支援を行う。2016年に飲食店に特化したコンサルティング会社である株式会社スリーウェルマネジメント設立。代表コンサルタントとして日本全国の飲食企業に経営支援を行う傍ら、日本フードビジネス経営協会の理事長として店長、幹部育成なども行っている。著書の「飲食店経営“人の問題”を解決する33の法則(DOBOOK)」はアマゾン外食本ランキングの1位を獲得。
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