変革への第一歩を踏み出したスバル:池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/7 ページ)
新広報戦略の中で、スバルは何を説明したのか? まず核心的なポイントを述べよう。今回の発表の中でスバルが「次の時代のスバルらしさ」と定義したのは、従来通りの「安心と愉しさ」で、その意味において従来の主張とブレはない。従来と違うのは、その「安心と愉しさ」とは何なのかについて、総花的にあれもこれもありますではなく、もっと具体的言及があったことだ。
燃費については具体的な言及はないが、教科書通りに、エンジンの苦手な領域をモーターでカバーすることで、例えば低回転高負荷のような難しい領域で、エンジンを無駄に頑張らせないことによって、燃焼の良いところのみを使うようにする設計だ。
素養として燃費に厳しい水平対向だが、燃焼が乱れがち(つまり燃費が悪くなる)な運転領域でのエンジンの仕事を回避すれば、意外に良い燃費になる可能性はある。ただし、トヨタのダイナミックフォースエンジンと戦えるほどに改善できるとも思えず、ここはデビュータイミングでの燃費のスタンダードがどの程度まで伸びているかにも依存するだろう。そういう意味では来たるべきxEV(順列組み合わせ的にバリエーション化された電動車両:xは変数を意味し、BEV、PHEV、HEVなど多数考えられる)の時代には、エンジンごとトヨタから調達して、シャシーと駆動でスバルらしさを示していく形にした方が妥当かもしれない。
さて、その他には1.8リッターの新設計リーンバーンターボエンジンが新型レヴォーグに搭載されて登場する予定だが、これについては詳細はまたもや発表されず。勝手に予測するしかない。それについては過去記事でかなりこってりと書いてあるので、そちらを参照されたい。
衝突軽減ブレーキのアイサイトについては、従来通りステレオカメラを中核としたシステムとして進化させていく。個別の機能の追加は現時点を示すものにしかならないので割愛するが、従来の衝突軽減の範囲を超えて、システムとしてはドライバー・モニタリング・システムとの連動を高めて、ドライバーの異常にブレーキ側が対応できる範囲を広めていく考えだ。例えば意識喪失したドライバーに代わってクルマを止めるとか、誤発進の抑止、脇見運転への警告などだ。すでに他社で搭載が始まっているハンズオフ機能(手放し運転)も搭載を計画している。
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