「おにぎり100円」「コーヒー80円」のミニストップ 値下げ以外に求められる“大改革”:長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/4 ページ)
「おにぎり100円」に続き、コーヒーを80円に値下げしたミニストップ。相次ぐ値下げで一定の成果は出てきている。大きく引き離された大手3社に追い付くために必要な戦略は?
全店平均日販で大差
そうした事情もあり、コンビニ各社の全店平均日販(20年2月期第2四半期単体決算)を比較すると、ミニストップが43.0万円なのに対して、セブンが65.9万円、ローソンが54.3万円、ファミリーマートが54.0万円であり、上位3社に大きく水をあけられている(参考:食品産業新聞社ニュースWEB 2019年10月26日付、「ファミマとローソンが追い上げ、セブンのひとり勝ちにストップ」)。特に、セブンと比較すると1店舗平均で3分の2くらいしか売っておらず、販売力の差は歴然としている。
しかし、前年同期で比較すると、セブンは7000円減っているのに対して、ローソンとファミマは6000円増えている。ミニストップも5000円増えている。7payの導入失敗、セルフ式ビールサーバの導入失敗など、王者セブンに隙ができでおり、その分他社が巻き返した。もちろん、ミニストップにも結果が出てきている。
店舗数は、セブン2万1017店(前年同期比141増)、ファミマ1万5200店(同220減)、ローソン1万3855店(同58増)なのに対して、ミニストップ1998店(同241減)。この1年で最も不採算店を大量閉店したのがミニストップ、次いでファミマということになる。
それで利益が改善されるのは良いのだが、ミニストップの場合、もはやローソンの7分の1程度しか店舗数がない。行きたくても近くにお店がない人がさらに増えているのが厳しいところだ。
値下げにとどまらない大改革が必要
もちろん、ミニストップも手をこまねいてはいない。自社PBやトップバリュでポテトチップ、チョコレート、せんべいなどの菓子類をほぼ1袋100円で販売している。値段が高いといわれるコンビニでも、スーパー並みの価格に近づけて顧客を獲得しようと懸命に見える。
しかし、イオングループには「まいばすけっと」という都市型のミニスーパーもあり、主婦層への切り込みが難しい。他のコンビニのように、総菜や冷凍食品を強化すると、都市部ではバッティングしてしまい、共倒れになりかねないからだ。郊外にも「ウエルシア薬局」というスーパーとしても使えるドラッグストアがある。
また、セブンプレミアムのような総菜や冷凍食品の商品ラインアップの厚みが、ミニストップには足りない。業態開発の遅れは明らかである。自社グループ内での競合のジレンマを解決しないといけない。
立地も、幹線道路から外れた場所にあるのが集客減の主因で、リロケーションを考えた方がいい店が散見される。イートインも全般に老朽化し、椅子くらいは座り心地を良くしてほしいと感じてしまう店がちらほらとある。
バスク風チーズケーキソフト(人気のバスク風チーズケーキにソフトクリームを載せ、焼き砂糖をトッピング)と、ビックドッグ(もち粉入りの生地で揚げたソーセージドッグ、ケチャップと洋がらしが付く)をコーヒーで合わせてみた。どちらも1月の新商品
ミニストップが1店舗当たりの売り上げをあと10万円上げて、ファミマとローソンに追い付くのは、容易ではない。しかし、おにぎり100円とホットコーヒー80円に続き、売場全体の販売力向上と買い合わせによる顧客単価を上げる施策が動き始めた。成功体験が積み上がる傾向が出てきたといえる。
鈴木敏文氏がセブン&アイ・ホールディングス会長・CEO(最高経営責任者)の座を内紛で追われて以来、セブンの経営にほころびが見える。一方、ミニストップにも挽回のチャンスが十分にある。上位3社との大差を逆転するには値下げにとどまらない大改革が必要だろう。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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