内定辞退セットに賛否両論 心のこもった「就活謎マナー」が企業にとっても大迷惑な理由:採用側の意見は(2/5 ページ)
話題になった「内定辞退セット」。就活に関するマナーについての議論を巻き起こした。面接などの就職活動に、最低限のマナーは当然必要。しかし、その一方で、明らかに「ムダ」ともいえるマナーも中にはあるようで……
直接出向くことは本当に「マナー」か
就活におけるマナーは必要派と不要派で意見が対立しやすく、度々話題にのぼっては議論になることが多い。今般の「内定辞退時におけるマナー」問題についても、2019年5月に日経産業新聞に掲載されたコラムが就活生を中心に「謎マナーすぎる」などと批判されたことが記憶に新しい。
話題になったのは、就活生の悩みを解決する連載企画「就活探偵団」の記事「内定辞退の正しい伝え方、『直接会って、まず感謝』を」。記事内では都内私立大学で開催された「内定獲得後のマナーセミナー」の様子を紹介していたのだが、そこで指導されていた内容が「自分を選んでくれた企業に感謝の心を持ちましょう」「メールの送りっぱなしや電話で完結してはダメ。必ずその企業に足を運ぶことが重要」といったものであった。特に「企業に直接出向く」という行為に対して、就活生のみならず社会人まで違和感を持つ声が多く挙がったのだ。
ちなみに、今般の内定辞退セットの反響報道に際しても、先出のセット監修者はSNS上で「辞退はメールよりも丁寧に手紙で伝えてほしい!」というようなコメントをしている。では実際のところ、当の採用担当者側はそこまで応募者のマナーを厳しく判断しているものなのだろうか。
採用担当者も「迷惑」している?
筆者の周囲や、ネット上の反応においても、採用関係者側の見解はほぼ同様で「わざわざ訪問されても困る」「辞退するならメールでも電話でもいいから、とにかく早く教えてほしい」というものが目立っている。
そもそも、採用は大企業であっても実質的には数人規模の少人数でまわしていることが一般的であり、採用業務と並行して人事労務関連の仕事に忙殺されていることがほとんどだ。そんな中、辞退する人がわざわざ尋ねてきて感謝の気持ちを伝えられたとしたらどうだろうか。「丁寧なマナーの持ち主だ!」と評価されるよりも「特に他に話すこともないしなあ……」「早く仕事に戻りたい……」などと、困惑されて終わりだろう。
また、人事部門では採用目標人数を追って仕事をしている企業も多いため、早めに辞退を伝えてくれればその分、他の人に内定を出せるなど、補充のためのアクションも早く起こせることになる。マナーを重視するあまりに訪問機会をうかがったり、手紙を書くために時間をロスしたりしてしまい、結果的に採用人数が目標におよばす欠員になってしまうことの方が、採用担当者としては迷惑なのだ。
ちなみに、採用担当者の本音としては「メールでも電話でも手段は問わない」ものの、「どちらかといえば電話がありがたい」という意見が多かった。「その場で本人確認ができるため『なりすまし』による被害を防げる」「会話の中で辞退者が選んだ企業名や辞退理由、他社の選考手法の情報を知れて、採用を見直す材料をもらえるから」といったことが理由のようだ。マナーセミナー講師が言うような「内定をくれた会社への感謝」を伝えるなら、マナーに配慮するよりも「有益な情報提供」をすることこそ、辞退者のできる貢献なのかもしれない。
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