ドコモ代理店「クソ野郎」騒動に潜む、日本からブラック企業がなくならないそもそもの理由:労働環境を悪化させる“ブラック乞客”とは(1/5 ページ)
NTTドコモ代理店で起こった「クソ野郎」問題が新年早々大きな問題になった。代理店運営の兼松コミュニケーションズだけでなく、NTTドコモも謝罪文を出す事態に。問題の真相はどこにあるのか。労働問題に詳しい新田龍氏はに“ブラック乞客”の存在を指摘する。
「親代表の一括請求の子番号です。つまりクソ野郎」
「いちおしパックをつけてあげてください」
「親が支払いしてるから、お金に無頓着だと思うから話す価値はあるかと」
千葉県市川市の携帯電話販売店で新年早々発生した接客トラブルは記憶に新しい方も多いだろう。
携帯電話の機種変更のため販売店を訪れた男性客は、対応したスタッフから料金プランの見直しを勧められ、数枚の資料を渡された。その中に偶然紛れ込んでいた営業メモには、冒頭の通り当該男性を侮辱するような内容が書かれていたのだ。本件はすぐさまネットで拡散し、ニュース番組でも報道される騒ぎとなった。
男性は「『親が支払い』というのは実家が自営業のため、父親名義でまとめて支払った方が都合が良いだけの理由であり、顧客情報から勝手に推測して、このような指示を出すなど信じられない」と語っており、ネットで話題になってからようやく、代理店側から謝罪の連絡があったという。
携帯電話会社は「不適切な内容のメモを、お客さまにお渡ししてしまったことは事実」としたうえで、「当該店舗だけではなく、全店舗に対して、今まで以上に指導徹底し、再発防止に努めてまいります」とコメントしている。
ちなみに、当該トラブルが発生したのがNTTドコモの販売店であったため、ドコモの体質を非難する声が多く聞かれたが、同キャリア販売店でドコモが直接運営しているところは存在しない。一部、ドコモの100%子会社である「ドコモCS」が運営する店舗はあるが、それ以外は全てフランチャイズ店なのだ。今回問題が起きた「ドコモショップ市川インター店」は、「兼松コミュニケーションズ」の運営によるもので、同社はドコモのみならず、au、ソフトバンク、ワイモバイルの携帯販売店を全国で約420店舗(2019年4月1日現在)運営している古参企業である。
全国に販売・サポート網を築くため、携帯キャリア各社は人件費を安く抑えられる代理店を活用する傾向にある。キャリア各社は独自のショップスタッフ教育プログラムを用意し、接客スキルの向上に努めてはいるのだ。ただ、スタッフの採用と普段の育成については各代理店の力量差がどうしても出てしまう。良い雇用条件を提示できる代理店なら能力の高いスタッフを雇える一方で、例えば給料の安い代理店にはレベルの低いスタッフしか集まらない、といったことも起こり得る。結果、今回問題を起こしたようなドコモショップが生まれてしまうわけだ。
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