ドコモ代理店「クソ野郎」騒動に潜む、日本からブラック企業がなくならないそもそもの理由:労働環境を悪化させる“ブラック乞客”とは(2/5 ページ)
NTTドコモ代理店で起こった「クソ野郎」問題が新年早々大きな問題になった。代理店運営の兼松コミュニケーションズだけでなく、NTTドコモも謝罪文を出す事態に。問題の真相はどこにあるのか。労働問題に詳しい新田龍氏はに“ブラック乞客”の存在を指摘する。
「クソ野郎」暴言の裏に“ブラック乞客”?
来店客にまつわる侮辱メモをやりとりし、それが流出するなどさすがに論外であり、今般の店舗および店員に対して擁護の余地は皆無である。しかしこの問題の背景には、一部のモンスタークレーマーなど悪質客への対応を強いられる接客業スタッフの鬱積したストレスがあるのかもしれないし、「悪質クレーマーも相手にしなければいけない、割に合わない職場だ」といったネガティブイメージが浸透し、結果としてモラル意識の低いスタッフしか採用できない状況に陥っている、という代理店側の事情もあるのかもしれない。これはドコモだけの問題ではない。さまざまな客層を相手にしなければならない携帯販売業界自体、ひいては日本という国で接客業を営むうえで特有の問題なのだ。
携帯電話販売店に勤務する筆者知人はこう語る。
「今回の件についてはお店側の対応が悪いのは間違いない。しかし私たち販売スタッフもお客さまから心無い言葉を言われたり、怒鳴られたりすることも多いんです。かといって決して言い返すことはできず、こうやって報道されることもない。ストレスフルな環境ですよ」
仕事柄、ブラック企業問題についてよくコメントを求められる。その中で、頻出する質問ながら回答が難しいのが「これほどブラック企業が社会的な問題になっているのに、なぜ淘汰されることなく生き永らえているのか?」というテーマだ。
長くなるので詳細はまた別機会に述べるが、「労働法規と労働行政の問題」「日本的雇用慣行の問題」「経営者と従業員の問題」に加えて必ず筆者が挙げる理由の1つが「ブラック乞客」の存在だ(「乞客」とは、ホワイト企業アワードを受賞したシステム開発企業「アクシア」代表の米村歩氏が頻繁に発信している概念で、「理不尽な要求をしてくる悪質顧客」のことを指す)。
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