楽天、送料無料化で「三方良し」掲げるも実態は「独り勝ち」? 強気の三木谷社長 欠ける説得力:欠ける「利益」の視点(1/2 ページ)
楽天市場の送料一部無料化問題が波紋を広げている。3月18日に開始することを予定しているが、出店者の反発はおさまらない。強気の三木谷社長だが、説得力には欠けるのが現状だ。Amazon追従に何よりも必要な「出店者の理解」は得られるのか。
3月18日に開始予定のECモール「楽天市場」の一部送料無料化に対する反発が収まらない。売り上げや顧客満足度の向上を主張する楽天だが、出店者らの「利益」に関する言及は乏しい状況だ。物流業界の人手不足などで配送料のコストが増大する中、無料化は出店者らの致命傷ともなりかねない。出店者らの任意団体「楽天ユニオン」は公正取引委員会に反対署名を提出するなど、波紋が広がっている。
問題となっているのが、酒類などの一部商品や、沖縄県や一部離島を除き、注文金額が3980円(税込)を超えた場合、出店者に送料無料を事実上義務付ける施策だ。この施策を楽天側が最初に発表したのは2019年1月の楽天新春カンファレンス。主に出店者側に対して毎年行っている「施政方針演説」ともいえるイベントで、三木谷浩史社長が発表した。
その後も楽天の「送料無料計画」は進行。19年春には実証実験を行い、8月に送料無料となるラインを「3980円」にすると発表した。その後、出店者らへのヒアリングを経て、適用を除外する商品や、一部地域では無料ラインを「9800円」とするなどの微調整を加えている。
楽天側は「三方良し」を主張
楽天が、メディアを対象にした会合などで繰り返し主張しているのが「三方良し」のモデルだ。楽天は、楽天市場にかかわるユーザー、出店者、そして楽天も得をする「Win-Win-Win」の形をかねてより重視してきたと主張する。今回の送料無料化も、その一環というわけだ。
楽天市場内の送料に関しては、たびたびユーザーからの批判にさらされてきた。商品検索画面では、「商品価格」で検索するため、送料が別になっている商品は、最終的に支払う価格が分かりづらい。そのため、例えば「安い順」で検索して、最も安い商品だと思っても、送料を加えれば他の商品よりも高くついてしまうケースも出てきているという。
例えば、楽天市場で「おにぎり」と検索して、「価格が安い順」でソートすると、送料込みで「766円」の商品(商品価格は106円)が、送料込みで「360円」(商品価格は110円)のものよりも上位に表示される。一見すると最も安い商品でも、別途送料を加算すると高い商品だった――こうしたケースが続発している。このような事態が、ユーザーにとって分かりづらい状況を生み出している、と楽天側は主張する。
分かりづらい送料が、楽天市場への不信感を募らせたユーザーの「楽天離れ」を呼び、結果的に出店者が損をしている。それが「三方良し」を阻害している――というのが楽天のロジックだ。
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