「としまえん閉園」は寂しいけれど…… 鉄道会社にとって“遊園地”とは何か:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)
東京都練馬区の遊園地「としまえん」が閉園し、跡地は大規模公園、一部にテーマパークができると報じられた。お別れは寂しいが、鉄道会社系遊園地の役割は大きく変わり、これまでにもたくさんの施設が閉園した。その跡地には、時代に合った街ができている。
鉄道会社系遊園地の役割が変わった
「兎月園」は特殊な例だが、関東、関西とも、鉄道会社系遊園地の閉園の理由を一言で言えば、鉄道誘客施設としての役割が終わったからだ。
かつて郊外立地だった遊園地周辺は住宅地となった。通勤需要、生活需要が発生し、遊園地輸送の重要度が低くなる。遊園地は近隣の不動産から騒音発生源として嫌悪施設扱いされるようになってしまった。
沿線の開発が一巡して、鉄道会社の収益構造のうち、鉄道の比率が低下。不動産、流通部門が大きくなった。そうなると、遊園地などレジャー部門は「鉄道を支える事業」ではなく「自立した収益構造」への転換を求められる。それができなければ、維持費のかかる装置産業より、土地を他の収益のある用途に振り替えた方がいい。
鉄道系遊園地の衰退が見えた頃、1981年に東武鉄道が東武動物公園を開業した理由も、鉄道の誘客を見込めるからだ。もちろん遊園地単体の事業が成り立つという目算もあったことだろう。東武動物公園は3000台分の駐車場があり、鉄道からの入場者送り込みに特化していない。
遊園地単体の事業が成り立つという意味では、京成電鉄の東京ディズニーランドへの参画が分かりやすい。京成電鉄は浦安沖を埋め立て、住宅や大型商業施設をつくり、都心からのアクセス路線を敷設する計画を持っていた。その大型商業施設「オリエンタルランド」のために京成電鉄などが設立した会社が株式会社オリエンタルランドだ。
ところがその後、京成電鉄は本業が不振となり計画は頓挫。オリエンタルランドはディズニーランド誘致に方針転換した。その結果、オリエンタルランドは東京ディズニーランド、ディズニーシーの運営母体となった。京成電鉄はオリエンタルランドの筆頭株主である。結果的に、京成電鉄は鉄道誘客施設の谷津遊園を手放し、鉄道から独立した事業としてテーマパークを成功させたともいえる。遊園地からテーマパークへという、レジャー市場の動向を先取りした。
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