新型特急「Laview」が拓く、“いろいろあった”西武鉄道の新たな100年:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/5 ページ)
西武鉄道は新型特急「Laview」を公開した。後藤高志会長は「乗ることを目的とする列車に」と強調。西武特急に対する危機感が表れている。この列車の成功こそ、“いろいろあった”西武鉄道を新たな100年へと導く鍵となりそうだ。
西武鉄道は2月14日、新型特急車両「001系」を報道公開した。この列車の成功こそ「いろいろあった」西武鉄道を新たな100年へ導く鍵となる。そして後藤高志会長は「単なる移動手段ではなく、乗ることを目的とする列車に」という趣旨の発言を3回もした。背景に「西武特急は変わらなければいけない」という危機感がある。
鉄道会社の新型車発表会に会長職の後藤高志氏が登壇する。その意味と、彼の「感無量」といった表情に気付いた人はどれだけいただろうか。私が新型車発表会を取材する機会は少ないけれど、技術的に優れた車両の場合は、車両製造の責任者や担当取締役があいさつする。経営的に重要な主力車両や特急に使う看板車両の場合は、社長が登壇する場合もある。
ただし、車両発表会において経営トップの発言は「あいさつ」として聞き流され、しっかり報道されにくい。何しろ鉄道車両への関心はデザイン、サービス、性能、ダイヤなど、現場レベルに集中する。一般紙の記者は鉄道利用者に、鉄道趣味誌の記者は鉄道ファン向けに伝えたいことがたくさんある。あいさつは載らない。仕方がないことではある。
しかし、この日、西武鉄道会長があいさつした意味は重い。なぜかといえば、後藤氏は社会的に信用を失った西武鉄道の社長に就任し、改革の陣頭指揮を執り、グループを再編。持ち株会社西武ホールディングスを再上場させ、ハゲタカファンドから西武鉄道を守った人物だからだ。
西武鉄道にとって、後藤氏にとって、新型特急「Laview(ラビュー)」として誕生した001系は、新生西武鉄道の集大成、フラッグシップという意味を持つ。2012年に創立100周年を迎えた西武鉄道の「次の100年」に向けて走り出す列車を送り出す。その責任と誇りが後藤氏にはある。
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